英国国立鉄道博物館(ヨーク)のコレクションから、ポスター100点余りと関連資料によって構成された展覧会のカタログである。ただし、本書にはポスターだけが収録されている。筆者は東京ステーションギャラリーの会場で本書を入手したが、展覧会はその後、宇都宮美術館(九月一〇日〜一〇月一九日)、神戸阪急ミュージアム(一一月五日〜三〇日)を巡回する。
本書中の橋本論文が指摘するように、英国の鉄道ポスターは「名所図会」的な構成の頻出に特徴がある。今世紀のはじめには、鉄道網の発達によって「旅行」は大衆化した商品として生産〜消費されるようになった。この成長株の新商品に対する消費の欲望を喚起する装置として、景観の広告がどのように展開されたのか、鉄道や船舶といった交通機関が自己イメージをどのように構築していったのかを考える上で、本書所収の図版(特に戦前の部分)は豊かな示唆を与えてくれるはずである。
解説論文はいずれも短いが、要領よく綴られている。ただし、各頁の説明文に、推敲・校正が不充分ではと思わせる箇所が散見されるのは残念。
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