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京滋地区私立大学非常勤講師組合:基本的文書:1996
京滋地区私立大学非常勤講師組合:基本的文書:
- 1995年7月「結成に至るまでと結成当初の経過」
- 1995年7月19日「結成宣言」
- 1995年7月19日「規約」
- 1995年7月19日「大会議案書」
- 1995年 「大学への非常勤講師組合結成の通知および要求書」
- 1995年 「要望書」
- 1996年1月20日「大学理事会への懇談会申入書」
- 1996年2月6日「立命大理事長宛 懇談会応諾への返信」
- 1996年2月28日「立命大懇談会資料」
- 1996年3月7日 「第2回定期大会議案書」
- 1996年9月28日「「9.28非常勤講師を語る会」での報告に補足して」
- 1997年3月2日「定期総会議案書」
- 1997年6月12日「立命大への要求」
- 1997年6月16日「団体交渉での諸大学への共通要求」
- 1997年7月28日「立命大教学部への:BKC 移転に伴う語学改革についての懇談の申し入れ」
[7]1996年1月20日「大学理事会への懇談会申入書」
1996年1月20日
大学理事会御中
京滋地区私立大学非常勤講師組合
執行委員長 林誠宏
拝啓 貴下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
さて、12月20日付けでお送りいたしました書面で、通常の労使交渉の前に、関係各大学と、山積する諸課題を整理し、双方の意志疎通をはかる目的で、懇談致したい旨の申し入れを行いました。貴大学におかれましても、ご検討いただけたことと存じます。
この度、当組合よりの申し入れに応えて、京滋地区私立大学教職員組合連合より、オブザーバーとして参加していただけることとなりました。ご連絡いたしますとともに、改めまして、下記の通りの懇談の場へのご出席をお願い申し上げます。
また、会場といたしました私学会館の地図などを同封いたします。
記
一 懇談会は、通常の労使交渉ではなく、労使交渉を前提に話し合いを行う場とする。
一 懇談会を、1996年1月25日2時より、私学会館において行う。
一 課題は、双方から提示する。
なお、当組合と致しましては、
1、非常勤講師の私立大学における役割・位置付け
2、基本的な賃金問題
3、非常勤講師の健康管理の問題
を、基本的な課題として考えております。よろしくご検討をお願い申し上げます。
以上
[8]1996年2月6日「立命大理事長宛 懇談会応諾への返信」
1996年2月6日
学校法人立命館理事長川本八郎 様
京滋地区私立大学非常勤講師組合
執行委員長 林誠宏
私たち、京滋地区私立大学非常勤講師組合のために、懇談の場を設けることに御同意いただき実にありがとうございました。
記
一 懇談会への出席予定者は以下のとおりです。
執行委員長・林誠宏、副委員長・小林康則、書記長・石黒やすえ、会計・吉田浩司、
執行委員・森田安洋、佐野里花、
一 我々の諸課題を共に考えていただいている京滋地区私立大学教職員組合連合にオブザーバーとして同席を要請致しましたところ、快諾を得られました。私大教連書記長・加藤恒彦、書記次長・野上一郎の両氏にも参加していただきたいと思います。ここに、御連絡させていただきます。
一 当組合として懇談の席で取り上げていただきたい議題
1、貴大学の非常勤講師の位置付け・役割
2、非常勤講師の生活実態及び基本的賃金・手当の問題
3、非常勤講師の健康管理の問題
一 日時・場所
1996年2月28日または29日の午後2時〜5時を希望しております。
日時・場所は貴大学で御指定下さい。
なお、貴大学の非常勤講師の問題に関わる政策文書がございましたら、事前に送付いただければ幸いです。
1996年2月20日頃までに、事務局宛ご回答いただきたくお願い申し上げます。
以上
[9]1996年2月6日1996年2月28日「立命大懇談会資料」
〔資料〕
京滋私立大学非常勤講師組合・立命館大学懇談会
1996年2月28日
京滋私立大学非常勤講師組合執行委員会
1、私立大学教育における非常勤講師の役割・位置付け
専任率の問題、外国語教育・一般教育における役割の大きさ
徒弟的な就職準備期間としての非常勤から専門的高度職業人へ
大学人としてのパートナーシップの確立
2、非常勤講師の生活実態
平均約週15コマ ほぼ毎日出講 年収400万前後
コマ数では専任教員の2〜3倍、収入は半分以下
業績主義、論文の本数
授業内容の改善、教材の開発、参考資料の選定・印刷の努力への評価
3、基本賃金・一時金の問題
「時間請負」的賃金体系ではなく、職業としての賃金体系を
東京の例・ランク分け 立教は12段階 中央は10段階
7コマ程度で最低限の生活保障を 最低基本賃金を3万円程度に
改革の名による急激なコマ数減をなくすこと
一時金、手当の問題
立命館大学の現在の状況 関関同で支給されている出講手当
「時間請負」的状況から来る待遇・事務職員との関係
講師控え室の劣悪さ・物置化
教育研究面での専任との格差
4、非常勤講師の健康管理の問題
健康診断の実施状況
社会保険
産休・育休の問題
[10]1996年3月7日 「第2回定期大会議案書」
京滋地区私大非常勤組合第2回定期大会議案書
1、第1回大会から今日までの活動
1)私たちをとりまく状況−大学改革の進行と本務校を持たない非常勤講師問題−
文部省の1987年の大学審議会設置以来、大学審は多くの答申と審議のまとめ・概要を発表しています。それに伴い各大学でも様々な改革の試みが行なわれています。「教育機能の強化」「世界的水準の教育研究」「生涯教育への対応」個性化・特色化という形での大学教育の多様化を推進する方向が打ち出されています。一方、19歳人口の減少、平成11年の臨時定員の期限切れ、ここ数年の深刻な不況と産業空洞化のもとで、大学経営の危機が叫ばれています。こうした中で一般教育を軽視・削減する方向が強まっています。学生が語学学習や資格取得のために専修学校へも通学する「ダブルスクール」現象も生じております。世界一高いといわれる教育費・学費は学生や保護者の肩に重くのしかかっています。一方、政府の「住専処理」にみられるような巨額の資金を企業救済には当てても、教育行政は相変わらず貧困で、教育には口は出すが金は出さないといった姿勢で、私学への助成金も減少傾向が続いております。新卒者の就職難、「いじめ」による自殺者の続発、登校拒否は新たな社会問題になっています。
こうした中で、今日の大学教育において、本務校を持たない非常勤講師の役割は、質的にも量的にも非常に重要なものになっており、非常勤講師なしに大学教育は成り立ちません。にもかかわらず、私たちは、高度な専門的職業人として位置付けされておらず、時間請負的なパートタイマーとして置き去りにされ、大変不安定な雇用条件のもとで、高い税金・高い社会保険料の負担と「カリキュラム改革」という名のリストラ、担当コマ数の減少といった一層強まる生活不安に脅かされています。
このような不安定な生活の中で、私たち非常勤講師は、授業内容の改善・教材の開発など個人的な努力を続けております。しかしもう限界です。こうした事態は、私たちが組合を結成し、各大学と個別折衝する中で大学側も認めざるをえませんでした。
私たち非常勤講師はこのような内外の厳しい状況の下でも、大学教育におけるパートナーとして、真の大学改革・カリキュラム改革を行っていくため、学生の多様な要求を受けとめ、積極的に大学改革の論議に参加していくことが強く求められています。
2)私たちの取り組み
(1)大学当局への働きかけ
7月19日の組合結成後、直ちに「組合結成の通知及び要望書」を10月1日までの期限付きで京滋地区の大学理事会へ送付しました。これに対して、同志社大学、立命館大学、京都産業大学、龍谷大学、京都学園大学、京都女子大学、同志社女子大学から回答がありましたが、「非常勤講師の大学教育における役割について重要であると認める」(京産大)一方、大学側と当組合との間に労使関係が成立しているかどうか、当組合が法律上の労働組合としての要件を満たしているかどうか、規約・代表者・組織などについての説明を求められるというものでした。そこで、10月18日に規約・結成宣言・代表者・執行委員名を送り、当組合が規約に基づく自主的・民主的組織であることを明らかにしました。と同時に、非常勤講師の抱える問題が多岐にわたって出ていること、問題が山積していることなどから、組合と各大学の双方で論点や課題を整理する必要のあること、また、大学を重複する非常勤講師の勤務実態、各大学に共通する課題が多いなどの点から、関係各大学による合同懇談会の設定を提案する旨の文書を送りました。
そして、12月20日付けの文書で、通常の労使交渉ではなく、労使交渉を前提に話し合うための合同懇談会を、1月25日に私学会館で行いたい旨を、同志社大学、立命館大学、京都産業大学、龍谷大学、同志社女子大学、京都女子大学、京都学園大学、京都精華大学、京都薬科大学の九校(組合員が勤務する主な大学)へ文書で再度通知いたしました。しかし、残念ながら、1月25日の合同懇談会は、事前に各大学から欠席通知があり、全大学欠席いたしました。急遽、私大教連との懇談に切り替え、今後の対応について協議しました。各大学は欠席通知の中で、合同ではなく個別の懇談を望んでいることから、私たちもこれを尊重し、96春闘を視野に入れた個別懇談会で臨むことを確認し、直ちに各大学へ連絡を取り、京滋の私大を代表する龍谷大学(2月21日)、京都産業大学(2月22日)、同志社大学(2月23日)、立命館大学(2月28日)の各大学との懇談会を実現しました。各大学との懇談では、第一回大会で議決した諸要求のうち、緊急に解決を要する課題として次の三点にしぼって臨みました。
(1)大学教育における非常勤講師の役割と社会的位置付け
(2)非常勤講師の生活実態
(3)基本賃金最低3万円を基本とするベースアップ及び一時金・手当の問題
(4)健康管理の問題(健康診断・社会保険・産休育休)
私たちは、これらの課題の緊急性と意義を充分に話し合いの中で説明しました。しかし、これらの話し合いを通じて、大学側からは、事務担当者ということもあり、即答はありませんでしたが、当組合の認識と掲げた諸課題、特に非常勤講師の位置付けの課題は、個別交渉では具体的に解決していくことは難しく、各大学共通の課題として、合同懇談会で話し合わざるを得ないことを認識させることができました。
(2)執行委員会活動
9月1回、10月2回、11月2回、1月1回と執行委員会を開き、ほぼ定期的に活動しました。会議は基本的に全員が討論に参加し、仕事を分担する形で進められました。各大学との懇談には全員が参加しました。
また、『非常勤組合通信』を隔月で二回発行し、運動を組合員にお知らせしました。
(3)私大教連との協力
私たち非常勤講師組合は、結成準備から今日まで、物心両面にわたって様々な援助を私大教連から受けてきました。
9月、12月、1月の三度、私大教連四役会議の場で、我々の立場や課題を説明し、情報交換を行ない、大学理事会側との交渉などの運動の進め方を協議しました。12月の京滋私大教連の大会では、未参加組合に対する働きかけ、特に非常勤講師組合に対する支援が確認されています。
(4)各私大単組への働きかけ
結成の通知を各大学労働組合に送付しました。しかし、その後直接の接触を持っておらず、各大学との懇談会の通知も周知徹底しませんでした。懇談会後、京都産業大学、同志社大学の組合事務所を訪問しました。
2、96年度の活動
1)私たちの活動の目的
私たち非常勤講師は、大学教育における不可欠の存在でありながら、その専門的高度職業人としての社会的役割や大学内での位置付けが軽視されたまま、今日まで「大学改革」の外に放置されてきました。非常勤講師組合の結成の大きな意義の一つは、放置されてきた、それなしでは真の「大学改革」が達成できない非常勤講師の問題を、大学当局に考えざるをえない問題として提起したことにあります。また、その役割にふさわしい経済的待遇を大学当局に要求していきます。そのためには、大学学内外の世論を喚起する活動を展開することが求められます。非常勤講師の問題は、個別一私大だけの問題ではありません。
本務校を持たない非常勤講師の学内的社会的位置付けの明確化を求めて、京都の大学間共同の問題として運動を展開していきます。
2)具体的取り組み
(1)組織の拡大・強化・民主化
昨年度は、創立当初ということもあり、対大学当局との交渉を重点課題としたため、充分な組織運営ができず、意欲的な組合員拡大の運動にも取り組めませんでした。また、通信の発行など、組合執行部から組合員への報告は一定程度行いましたが、組合員から執行部へのパイプが充分ではありませんでした。今年度は組合員100名の目標で、組員拡大を意識的日常的に追求します。また、通信、アンケートなどの手段を使って、一人一人の組合員に依拠した活動を進めます。
(2)各私大支部の結成
非常勤講師の問題は、社会的問題ではありますが、個別問題への取り組みも重視すべきです。各大学との懇談を通じて、各私大個別の問題も明らかになりました。図書館利用の問題、講師控え室の問題、賃金ランクの問題など、声を上げればすぐにも改善できる課題もあります。また、私たちの存在をアピールすることを各個別私大で行うことも重要ですし、各私大の組合との協力共同のためにも、各私大支部の結成は必要です。今年度は、特に非常勤講師が多い同志社大学、立命館大学に支部を結成し、世話人を置きます。また、龍谷大学や京都産業大学でも可能なところから支部を結成していきます。
(3)私大教連への加盟の検討
組合創立準備から協力共同の関係を築いてきた京滋地区私立大学教職員組合連合への加盟を前向きに検討します。
(4)各私大組合への働きかけ
『非常勤組合通信』を各私大組合に送ると共に、日常的に接触を持つよう努力します。私たちの運動は、これからの進展の中で、専任教職員の利害と必ずしも一致しない側面が出てくるかもしれません。しかし、たとえそうした可能性があっても、同じ大学に働く労働者として、支部世話人を中心にコミュニケーションを強め、相互理解に努めます。
(5)専任教員への働きかけ
多くの専任教員は、私たち非常勤講師の運動に理解を示し、必要性を肯定しています。こうした専任教員の人々と、(3)(4)で示した組織的協力のほかに、直接的個人的協力を求めていきます。具体的には、協賛金を募り、通信への執筆を依頼し、世論喚起に努めます。
3)春闘方針
要求項目は第1回大会で提起した要求実現ために引き続き努力します。
(1)基本賃金の改善
(1)現行の4段階の賃金体系を改めること。学部卒後5年を起点として、5年毎にスライドさせる方式に改め、起点の賃金(現行のCランク)を30000円とすること。
(2)本務校のないものに年末一時金・夏季一時金を支給すること。
*20年以上勤務し退職した者に一時金を支給すること。
(3)出校手当を引き上げ、出校加算制(日給)にすること(支給していない大学は支給すること)。
全体として、東京の大学並の賃金水準に引上げること。
(2)基本的人権を守るための要求
(1)私学共済への希望者の加入。
(2)健康診断の実施。
(3)産休の保障。
(4)急激なコマ数減を引き起こさないための制度的保障。
(3)教育・研究条件に関する要求
(1)非常勤講師共同研究室の設置。
(2)教学環境・教学システムの改善へ向けて非常勤講師に発言の場を与えること。
(3)研究補助費の支給。
(4)研究支援体制の確立・研究発表機関の確保。
(4)具体的取り組み
懇談会の成果を踏まえ、事務折衝から団体交渉へと進めていきます。この中では、懇談会で提起した緊急を要する3つの課題について論議していく中で、合同懇談会の実現を目指します。さらに、各大学における本務校を持たない非常勤講師の数や賃金以外の待遇面の調査を大学当局に求め、その情報を公開するよう働きかけます。また、京滋私大教連の春闘の動きと協力共同して運動を進めます。
[11]1996年9月28日「「9.28非常勤講師を語る会」での報告に補足して」
「9.28非常勤講師を語る会」での報告に補足して
私達非常勤講師組合は 結成以来各方面の方々から厚い支援と激励を得て,教育.研究活動と,労働条件の改善を目的に地道に活動を進めてきました。毎月執行委員会を開き,各大学との要求交渉や,「くみあい通信」の発行をはじめ時々に生じる各種問題を討議に付し,論議をへて,決めたことは必ず実行するという姿勢で進めてきました。また,定期大会や懇親会を通じ,組合員との意思疎通や連帯を強めることや,「くみあい通信」を発行し,活動をつぶさに公表し組合員内外との理解と支援をうることに,努めてきました。おかげで,この一年来私達組合の輪は,徐々にひろがっています。組合員の増加や東京非常勤組合との共闘をはじめ,他団体,他単組との交流,大阪等他地域からの問い合わせに現れています。この間,2回にわたる同大との交渉や立大,京産大,竜大との要求交渉を実現させ健康診断(同大−今秋から,京産大−今春から)や産休の適用の確認(同大)をすることができました。組合活動はまだ緒に着いたばかりとはいえ,組合員の要求や希望を大切にし,私達の地位向上と利益を守るために,力を合わせ活動をおし進めてたきた結果です。これは個人加盟の組合という性格から当然のことです。しかし来年度に向けた各大学における改革進度は早く,語学関係でも担当コマ数の伸長など大きい影響がでてきています。組合に対する一層の活動強化が求められています。
ところで,京滋私大教連加盟にあたり,関係方々からご尽力を頂いていますが,当組合に対し幾つかの問題提起がされています。(1)カリキュラム改革の進展により,担当コマ数減が生じたときどのような態度をとるか。(2)大学改革に対し反対の立場からコマ数減に反対するのか,それとも大学改革の推進には必ずしも全面的反対ではなく,話しあい解決をとる立場か。またどのような展望を持つか。公費助成運動や任期制問題に対しどのような態度をとるか等です。事実,私達はこの間,山積みする要求をまとめ整理し,大学との折衝やその結果をどのように公表するかといったことに追われてきました。いわば 生まれて間のない組合が,枠や骨組みだけできたばかりの段階で,組合活動にも未熟な者たちが,皆の期待と使命感に支えられて,目先の問題に追われている状態です。6名の執行委員も,各各専門も経歴も考えも種々であり,必ずしも意見が容易に一致するわけではありません。しかし.近代的民主的な組合活動のありようを求め,全ての問題は討議に付し,徹底した話しあいにより共通の認識を深め,論議を尽くして実行するというスタイルを堅持してきました。ところで 今 来年度に向けたカリキュラム編成作業が進められていますが,一般教養課程の物理化学や歴史系が年々コマ数減が現れ,深刻な問題となっていますが,語学系でも,A大学のように,独語が上限3コマに制限,中国語は1−3校時に配置されます。又 土曜の授業をなくすところも多く,私達の担当コマの選択幅が縮められております。またB大学に勤務する外人教師(英語)がこの2年間で3コマ全部なくなるという報告もあります。大学改革が社会と学生の要求にもとずいて進められているとはいえ,現状では,私達にとり厳しい労働条件のしわよせとして影響しているといえます。
今,私達が提起している諸要求は,1コマ単価のアップをはじめ,健康保険の加入等の問題がありますが,関西では何故か,大手私大はほぼ同じ賃金体系をとっており,暗黙の了解が大学間で取り決められているのではという疑問は拒めません。ところで,これらの要求解決を求める場合,個別大学の経営上から生じている問題と,歴史的社会的な要因から生じている問題の両側面から見る必要があります。いわば私立大学の脆弱な財政運営から安易に非常勤層に依存してきた事から生じた問題と日本の教育行政の貧困に起因する問題です。衆知のように政府は長年にわたり,学校運営に対し,管理や口出しはするが,金は出さないというやり方で,高等教育の負担を父母と私大におしつけてきました。私学連が取り組んでいる公費助成運動や任期制の問題については,私達も当然の事ながら,国は私学教育に対し,もっと国庫補助を増大させるべきだと思うし,任期制導入についても基本的に専任教員の地位や研究.教育活動を不安にし脅かす現在の方向には深い憂慮と関心を抱いています。私達はこの両側面から問題を見すえ,問題のたてかたや,闘いの方向を判断しなければなりません。
カリキュラム編成など,時に専任教員との矛盾が生じたとき,組合はあくまで双方の話しあいによる解決を求めています。ただ,週15コマ担当し,年間収入400万円位で生活をしのいでいる語学教師が,3コマ減少すれば,75万円の収入減になります。その分他のアルバイトで補うといっても,簡単にまかなえる事ではありません。私達は毎年こういった不安定な身分と待遇に脅かされているのです。もしコマ単価が3万円ベ−スになれば,少しは調整がつくのです。非常勤講師のおかれている厳しい労働条件については,社会的にも知られておらず,専任の先生すらも十分知っておられないのが現状です。今後.通信や宣伝活動を旺盛にし,この方面でも理解を得る事が大切です。
語学系では,今,独語や仏語が学生受講の減少し始めを理由に,深刻な影響が出てきています。しかし,独語や仏語が,明治以来,日本の文明文化の近代化に果たしてきた役割の大きさから考えると経済的要求から,英語や中国語に人気があるからといって,そちらへ傾斜するのも大きい問題です。むしろ,小人数であっても学びたい学生のために,4年かけてじっくり学べる体制を作る亊が大切なのではないでしょうか。私達も教学方法や教材研究を活発にし,学生の興味や関心を引き出し,彼等の知的要求に応える努力をする事は言うまでもありません。また,東京の立教大の例に見られるように,今後,非常勤講師の形態について,様々な提案がなされる事が予想されます。私達自身,今後の展望をふまえ論議していくことが必要と思います。
健康保険(社会保険)の問題ですが,これは要求項目の大きい柱の一つです。今,他の職種のパ−トタイマ−で就労した場合,健康保険は当然の事として実施されています。私達の場合,就労先が一校にとどまらず数校にわたる事から,大学は取扱を拒否しています。この問題は個別の大学では解決困難だと思います。これには関係する大学で出資してもらい,京都という地域的規模で,第三の受け皿機関(例えば大学センタ−)で取り扱ってもらうことができないだろうかと考えます。
私達はそもそも大学改革が,学生や父母の願いに応え,社会的要求にそって進められている以上,その真の改革のための論議に参加し,民主的発展のために貢献したいと願っているのです。一人一人が力を合わせ,広く論議をまきおこし,私達の運動を大きいうねりにしていこうではありませんか。
(書記長 石黒やすえ)
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