山田晴通:担当講義科目

文献の探し方について

このページは、「出典表示の基本的な考え方」のページに書かれている内容を理解した上で読んでください。

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 何かを「学ぶ」には、<既にどこかに答えが存在している問題について、その答えを教えてもらう>、<既にどこかに答えが存在している問題について、その答えを自分で見つける>、<答えが存在していない問題について、その答えを探し出す/考え出す>といった、様々な形があります。高校までの学習は、国(文部科学省)が定めた方針(学習指導要領)があって、何を習うかという側面が強いのですが、大学での学習はそれとはかなり趣きが異なります。大学では、与えられた課題の範囲内で、自分で具体的な問題を立て、参考になる資料やその問題について議論している人たちの見解を探し、その趣旨を踏まえた上で自分独自の考えをまとめる、という一連の作業が大切になります。高校までは「教科書」があって、その内容を消化することが大切だったと思います。大学の授業にも、入門的な内容の科目や技術的な側面のある科目を中心に「教科書」がある場合もありますが、その性格は高校までの教科書とはかなり異なります。大学の「教科書」は、そこに書かれた内容を頭に入れるためのものではありませんし、「教科書」だけを勉強していればよいということはありません。
 大学の学習は、教室での授業で完結するものではなく、相当の時間をかけて予習・復習を行うことが前提となっています(詳しくはこちらを見てください)。理系の場合は、実験や実習の比重が大きくなりますが、文系の場合は、何といっても自分で様々な情報を集めて消化し、またレポートを作成したり、プレゼンテーションの用意をすることが重要です。
 情報の収集というと、今日ではインターネットを介して様々な情報が容易に手に入るようになりました。その意味で、ネット上の情報を活用することが大切です。しかし同時に、ネット上の情報には様々な問題もあり、ネットに依存した情報収集では、内容に大きな制約が加わったり、偏りが生じたりするおそれがあります。したがって、印刷媒体などの文献による情報の収集は依然として非常に重要であり、特に学術的な議論においては避けて通ることはできません。参考になる適切な本を探し、読む(場合によっては本当に必要な所を嗅ぎ分けて抜き読みする)ことが、文系の学問をする皆さんには特に大切です。授業の宿題やレポートから、卒業論文の作成に至るまで、(ネット上の検索では容易に得られないようなものも含め)必要な情報を既存の文献類から引き出せるかどうかが、レポート類の出来を大きく左右することになります。
 このページでは、何かについて調べようとするときに、それに関係する有益な情報や、既に存在する議論を、どのように探すのか、そのヒントを紹介しています。ここで紹介されている方法を駆使して資料や参考文献を集めれば、あなたのレポートはずっとよいものになります。何よりも重要なのは、ひとつのテーマについて多くの資料や文献に目を通した上で、自分なりの判断をしていくという作業が、あなた自身の考える力を深くするということです。

基本的な考え方

 Wikipedia は、多数の言語版を並行して展開しているサイトであり、単に、Wikipedia といっただけでは、Wikipedia の多くの言語版を含むプロジェクト全体を指しているのか、特定の言語版を指しているのかは判りません。また、記事名が日本語であれば、日本語版の記事への言及であろうと推測は出来ますが、例えば、「CCCD」の記事であれば、日本語版だけでなく、英語版やその他の言語版も存在します。したがって、何語版であるかを明示しないと、その記事の記述に言及しているかは確定できません。  ウィキペディアの記事の記述は、ほとんどの場合は、いつでも誰でも書き換えることができます。新たな記事を作ることも、原則として、いつでも誰でもできます。このため、あなたが見た、ある記事の記述は、レポートの採点をするために山田が見ようとしたときには、全く異なる記述に書き換えられている可能性もありますし、記事が丸ごとなくなって、読めなくなっている可能性もあります。しかし、各記事の履歴ページを見れば、こうした書き換えの経緯を追うことが原則として可能です(ただし、法的な問題が指摘されたページなどは、削除されて後から見ることができなくなることもあります)。このため、ある記事のいつの時点の版を見たのか、あるいは、いつの時点でその記事を見たのかが判れば、記事内容を特定することが可能になります。
 ウィキペディアの場合は、何語版の何という記事のどの版を見た,というところまで特定してはじめて、自分が言及しているものと同じ記述を、レポート等の読み手に確認してもらうことが可能になります。

適切ではない Wikipedia の使い方

 以上に列挙するのは、レポートでありがちな、適切ではない Wikipedia の使い方です。以下の例はあくまでも設例ですが、いずれも、このページを設ける以前(2010年度まで)のレポートに見られた実例に基づいて構成しています。
  • Wikipedia の記述をそのまま コピー&ペーストでレポート等の一部に組み込む
      適切な引用の条件(出典の明示、引用範囲の明示、同一性の保持など)を適切に満たしていなければ、剽窃行為であり、不正行為として厳しく対応します。
  • Wikipedia の記述を、表現を多少加工して、レポート等の一部に組み込む
      意図的な剽窃行為であり、不正行為として厳しく対応します。参考文献として記事名が挙げられていたとしても、同様です。

  • 何語版の何という記事のどの版を見たという情報を明記しない
      参考文献として単に「Wikipedia」とだけ書いて、記事名も書かず、版指定もせずに平気でいるのは問題外です。そこまでひどくなくても、言語、記事名、版(ないし閲覧時刻)のすべてが明記されていなければ、不適切な出典表示として減点します。

  • *******

 授業開始時間から30分を経過しても教員が教室に現れない場合、いわゆる「自然休講」が成立して休講となる、という習慣は多くの学生諸君が認識しているところです。しかし、こうした理解は正確ではありません。

Wikipedia の利用が認められる場合

 上記のように、Wikipedia を、レポートなどの参考資料として挙げたり、引用元として使用するのは、多くの場合、好ましいことではありません。山田に提出されるレポートについて、このような行為があれば、大幅な減点の対象となります。しかし、下記に具他的な例を列挙するように、Wikipedia を利用することに必然性がある、例外的な場合には、Wikipedia の利用を認めることもあります。
  1. Wikipedia の記事の記述自体が分析の対象となるような課題についてのレポートで、記事の記述例を引用したり、参考資料として言及する場合。
  2. 特定の用語について、一般的に辞書・事典類でどのように説明されているのかを示すために、例として Wikipedia を取り上げる場合。
 以上のいずれの場合も、上で詳細に述べたように、単に Wikipedia とだけ出典を示すのではなく、何語版の何という項目に言及しているのか、それは、いつの時点の版なのか(あるいは、その内容を閲覧したのはいつだったのか)を明示することが必要です。

どうしても Wikipedia を使いたくなったときは

 上で述べた「Wikipedia の利用が認められる場合」にあたらないが、Wikipedia の記事に書かれている記述をレポートで使いたいと考えることもあると思います。その場合は、なぜ敢えて Wikipedia の記述を用いる必要があるのかを、レポートの中で判りやすく説明してください。ただし、そのような説明があっても、評価する側(山田)が必然性に欠けると判断すれば、大幅な減点となります。また、レポート等の締切まで時間に余裕がある場合は、できるだけ事前に山田に連絡をとって、そのような使い方が認められるかを確認してください。

 Wikipedia の記事は、典拠のある記述によって構成することが原則とされています(ただし、これが十分に守られていない記事も多々あります)。きちんとした信頼のおける記事には、個々の記述の典拠や、全体の理解を深める参考文献が、記事の最後の方に明記されています。こうした記事の場合は、指示されている出典や参考文献の記述を使うことで、適切な出典を見いだすことができる可能性があります。別の見方をすれば、そのような出典や参考文献が示されていない記事には、記述内容に十分な信用がおけない可能性があり、レポート等の記述の根拠とすることは適切ではない、ということにもなります。

 また、あまりお薦めはできませんが、Wikipedia の記事に書かれている内容と同趣旨の記述を含む別のページを、ウェブ上で検索するというのも,ひとつの方法です。使用したいと思った Wikipedia の記述と同じようなキーワードを検索して同趣旨の文章を探し、明らかに Wikipedia とは別の記述に、同趣旨の文章が見つかれば、そちらを参考資料として挙げることで、Wikipedia の使用を回避できます。ただしこの場合も、Wikipedia の記述を踏まえて記述されたようなページ(例えば*******)は、「明らかに Wikipedia とは別の記述」に当たりません。使えそうなページが見つかった場合も、Wikipedia に類似した記述がないかを必ず確認してください。
 ただし、ウェブ上で見つけたページの記述と Wikipedia の記事の記述が同一であったり、酷似していても、そのすべてが「Wikipedia の記述を踏まえて記述されたようなページ」とは限りません。逆方向で不適切な書き写しが行われる可能性もあるからです。例えば特定の企業についての Wikipedia の記事の記述が、その企業の公式サイトの記述と同一であったり、酷似していることがまれにありますが、これは Wikipedia の記述が、著作権を侵害する不適切な書き込みによって構成されているのかもしれません。このような場合は、レポート等の典拠なり参考資料としては Wikipedia ではない方のウェブページを用いるとともに、該当する Wikipedia の記事に、*******などの対応をとってください。
[最終更新:2011.01.16.]

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