業績外:1997:(同窓会誌のインタビューに応じた記事)
先生訪問
松本への赴任が学位論文のテーマを
山田晴通助教授.
東京経済(東京経済大学葵友会),255,pp12-13.
略歴
昭和33年福岡県生まれ。東京大学教養学部卒業。昭和61年東京大学大学院理学系研究科博士課程単位修得。平成元年東京大学大学院理学博士学位取得。昭和61年松商学園短期大学専任講師着任。平成2年同大学助教授昇任。7年東京経済大学コミュニケーション学部助教授着任。日本地理学会評議員、日本マスコミュニケーション学会、日本ポピュラー音楽学会等会員。
−「地域のコミュニケーション」とはどの様なことをするのでしょうか。
通常のコミュニケーション論では空間的限定、地域性というものを捨象して考えるんですけれども、そのコミュニケーション論の成果に、もう一回、地域性、空間的限定性を放りこんでつなげてあげると、どういう事が言えるのだろうかという話をするのが地域のコミュニケーションの建前的な話です。
具体的に何をやるかと言うと、まずは、地域メディアの話です。地域メディアというのは小さい町の新聞とかケーブルテレビとか要するに非常にローカルなスケールで展開しているコミュニケーションメディアです。もう少し抽象度が高い話としては、地域社会論も当然その射程の中に入ってきます。それから少し視点はずれますが、そもそもコミュニケーションにのった時、地域はどういう形で話題にされるか、どういうイメージで語られるか、という地域のイメージ問題もあります。そういった事も含めて、地域のコミュニケーションの議論を組み立てるというふうに考えています。
地域メディア論の分野では、断片的ながら大きな仕事をされた方が何人かいらっしゃるんですが、本学の田村紀雄先生も、先進的に仕事をされた方の一人です。従って田村先生が切り拓いてきた分野を軸にして講義を作っているというところです。
−ポピュラー音楽史概説もご担当ですね。
この講義では、ポピュラー音楽の歴史を、社会的背景などに注目しながら、一年間をかけて講じたんですが、これは平成八年度だけの特別講義なんです。
コミュニケーション研究は、様々な形で大衆文化研究と密接な関係を持っています。大衆文化の中でも、社会的に共有される広がりが大きいとされるポピュラー音楽については、様々なコミュニケーション研究の成果を接合した形での議論が積み重ねられてきました。そういう蓄積を利用しながら、ポピュラー音楽というとりつきやすいテーマを導入路として文化史、社会史、あるいは技術史といった切り口から、歴史的現象の多面的な展開を考えていく機会、社会の中でのコミュニケーションの機能について考えていく機会を学生に与えたいといった思いでこの講義を企画したんです。
−なぜ今年度だけの特別講義なのでしょうか。
既存学部の教員ですと、それまでの持ちコマがあるわけですが、私の場合新設と同時に着任ですので持ちコマ数のノルマの関係で今年度は特別講義をすることになったんです。せっかく特別講義で自由にテーマが選べるのなら、毛色が変わったことをやってみようと思い、以前、明治学院大学で、ポピュラー音楽概論を教えた経験をふまえて講義を構成しました。もうひとつの大きな理由は地下スタジオの施設を活用したいということでした。
−コミュニケーション学部の学生をどの様に育てたいですか。
学部の公式見解は別としてT企業社会に依存しなくてもニコニコヘラヘラ生きていける人Uを育てたい。これまでの東経大のスクールカラーとしての実学志向経済社会志向に反対するというんではないけれど、ちょっとずらした視点からもモノを考えられる様な、そんな人を作りたいなと僕自身は思っているんです。つまり、今の世の中では、企業に入って頑張ることだけが社会的に立派な生き方ではない様になってきていると思うんです。人間が人間らしく生きるために、あるいは社会の一員として社会に貢献することを考えた時に必ずしも企業活動を通じた貢献だけではないだろうと。特に女子はまだまだ日本の企業の中で職業人として全うすることはすごく難しいし、就職してから退職するまでの企業社会の中で過ごす年限と、それから後の地域社会の中で過ごす年限とを考えたら絶対後の方が大きいんだもの。企業社会的な社会のありようを否定する訳でもないんだけれど、もっとちがうところでタフに生きられる物の見方とか考え方みたいなものを、あるいはそういう事を考えなければならなくなった時の勉強のしかたを最低限身につけている人を作り出せればいいかなと考えているんです。これまでの既存学部の学生が歩んだ道を行くのもいいけれど、違う分野を歩む学生も出て来て欲しい、学部の中で僕の考え方がメインストリームだとは思わないけれど、いろんな考え方が混じっているところでバランスが出てくるんじゃないですか。
−Dr論文は、CATVに関するご研究だそうですね。
昭和六十一年から長野県の松商学園短期大学に就職し、そこで九年間すごしました、田舎へ引っこんでしまって、情報のことを専門でやるなんて言ったら、東京から離れたらすごい落差があるんですよ。一般的な情報ではなくて学界の中でのいろんな研究会等の情報ですが、完全に欠落しちゃうんですよ。そこで考えたんです。松本でフィールドワークができるものをやろうと。それで始めたのがCATVの研究です。ですから学位論文は『わが国におけるCATVの存立基盤』というテーマです。就職して三年で出した成果でした。
(聞き手・原 靜枝)
『東京経済』は、大倉商業学校、大倉高等商業学校、大倉経済専門学校、東京経済大学の同窓会である「葵友会」が刊行する同窓会誌で、年六回奇数月に発行されています。
東京経済大学葵友会
〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-8-1 日比谷パークビル214号室
葵友会事務局は、上記から大学内に移転しました。現在の事務局所在地は以下のようになります。
〒185-8502 東京経済大学内
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