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(清水祥子) FM長野を訪問して 合宿3日目、松本市にあるFM長野を訪問した。FM長野は長野県で唯一の民間放送局である。なぜ「FM長野」なのに松本市にあるのかというと、地理的に言うと松本市が長野県の中心に位置するということや、松本市の方がメインの美ヶ原中継所から受信しやすいためなどである。 FM長野は全部自分たちで番組をつくっているわけではなく、主に夕方・朝の情報番組以外は東京FMとJFNからもらっている。JFNは「Japan FM Network」の略で、独立している局の連合体であり東京のキー局の要望を聞いて番組を作ったりしている。FM長野も東京FMもJFNに「加入している」という形だ。 私たちはまずFM長野のマスター室を見学させてもらった。放送局の心臓部であるマスター室には常時2人くらいが待機している。マスター室を案内・説明してくださった方は「マスター室に人がいると誤って機械のボタンを押してしまったりすることもあるので無人が望ましいのでは。」と言っていた。その日の放送予定の番組やCMが組み込まれているコンピューターシステムは2台あり、1台は現用、もう1台は予備として使われている。予備はあくまでもバックアップ用で、放送を中断させないためでこの他にもいろいろな対策がとられている。例えばCMをMDに入れておいて現用、予備が壊れたときでもCMだけでも流れるようになっている。また自動的に波の音が流れるような仕組みにもなっている。もしも放送が中断してしまった時は法務省に届け出が必要になる。コンピューターのシステムには一週間前から(番組によっては2、3週間前から)入れはじめ、前日までにはそろうそうだ。オンエアをすべてハードディスクに録音し、法令で決められている90日間は保存している。90日間を過ぎるとそれにどんどん上書きしていく。 中継局は美ヶ原がメインで他に5つの中継局がある。中継局はFM長野ではなく違う会社に委託管理してもらっている。FM長野のビルの屋上にパラボラアンテナがあり、マスター室の中のJFNサテライトシステムという機械で受信する。受信時の障害物はなんと雨である。例えば東京に雨が降っていたら受信時雑音が入ってしまう。東京からの受信ができない時はFM北海道に切り替えて受信するそうだ。そして受信時電波が低くなった時は電話回線(ISDN、124k)でバックアップする。電波が低くなってきたら電話回線を開き、電波がかなり低くなった時には完全にISDNに切り替える。しかし電話回線なのでとてもコストがかかってしまうそうだ。 マスター室の後はスタジオを見学した。ちょうどスタジオではFM長野が制作している番組の「Remix Sight」を生放送していた。スタジオはDJがいる部屋と、CDをセットしたり機械を操作する部屋に仕切られていた。もちろんCDは勝手に流れるわけではなく、人が一枚一枚セットしている。ちなみにCDの在庫は3万枚あるそうだ。DJ田中利彦氏の軽やかな口調とCDランキングの歌、そして今自分がスタジオにいる興奮に時間も忘れて楽しんだ。 FM長野の社員の方々は全体的に若く、番組放送中もわきあいあいとした感じで良い雰囲気だった。生放送なのでもっと張りつめた感じかと思っていが、リラックスした雰囲気で皆しっかりと仕事をこなしていた。どちらかと言うと私の方が緊張していたように思う。 そしてもちろん帰りは車内でFM長野を聞きながら、興奮さめやらぬまま帰ったのだった。 シャトレーゼ白州工場を訪問して シャトレーゼは今や工場直売店450店舗を誇るお菓子の会社である。このシャトレーゼの「工場直売店」と呼ばれる販売網は、独自の物流システムによって流通仲介業者を排除し無駄な流通マージンや時間のロスをカットしたものでこれによりできたてのお菓子を新鮮なうちにより安く届けることを可能にした。 今回はシャトレーゼ工場の白州工場を訪問した。山梨県白州町は南アルプス標高2966メートルの甲斐駒ヶ岳のふもとに位置しその山村に流れる“尾白川渓谷の水”は日本名水百選に選ばれている。この工場ではその白州の天然水をふんだんに活用し、天然水のアイスを始め和菓子の餡や飲料水、ゼリー、ピザ、進物までもが生み出されている。 白州工場は敷地面積35,000坪(東京ドーム8.5個分)、建坪5,000坪、総費用140億で平成6年7月から稼働した。従業員数はパート・アルバイト含め260人で、そのうち日系ブラジル人が100人働いている。日本の労働賃金が高いためである。 この工場は徹底したオートメーション化により省人化と安価な商品供給を可能にした。例えば袋包装された商品は「ロボットケーサー」によって箱詰めされ「パーチレーター」で運ばれる。そして「パレタイザー」でパレットに積まれる、といった具合だ。 白州では天然水を利用したアイスクリームがメインだが、どのように作られるのかというと、アイス型に直接アイスミックスを流し込み、−40℃のプライン水(塩化カルシウムの冷却水)につけて冷凍する。アイスミックスを充填してから抜き取るまでなんとわずか6分しかかからない。そして出荷まで−30℃の冷凍庫に保管される。この冷凍庫は脱フロンでアンモニアを使用していて環境に最大限努力している、という白州工場の特徴だ。そして排水にも気を使っている。白州工場の一日の排水処理量は730トン(多いとき、7・8月は950トン)。山梨の水質の有機汚濁を示す指標BOD値は30ppmが基準値だが、この工場では10ppm以下で排水している。この値は東京の水道水に近いといっても過言ではないくらいのものである。ここで「白州工場の排水はきれいだ」と言っていいものか「東京の水は汚い」と言うべきか東京在住の私には複雑な心境である・・・。 今回のシャトレーゼ白州工場訪問では日系ブラジル人の従業員用に書かれた廊下、トイレに貼ってあったポルトガル語が印象的だった。機械化された設備にも圧倒された。また飲み放題だった「汲みたて天然水 烏龍茶」がとてもおいしかったのは今考えると外の暑さのせいだけではなく、素材の水がそのおいしさを作っていたのだと思った。食べ放題のアイスのコーンがサクサクしておいしかったのも、素材への徹底的なこだわりによってこの工場でアイスのコーンの焼成も行っているからであったのだ。シャトレーゼのこだわりをのどでも舌でも実感した日であった。 |
(野口由佳) 岡谷市民新聞 信州・市民新聞グループは7つの日刊紙(岡谷市民新聞、下諏訪市民新聞、諏訪市民新聞、茅野市民新聞、たつの新聞、みのわ新聞、南みのわ新聞)を長野県の中央部・諏訪地方と上伊那地方の隣接した7市町村に発行している。市民新聞グループは「活字を一字も使わない日本ではじめての日刊紙」で有名だ。CTS(Cold Type System)という方法を開発し、新聞製作現場から鉛活字を追放、写真植字機、オフセット印刷機などを導入し設置した。37年前当時としては非常に画期的な技術革新に、全国から参観者が続いたということで新聞業界では歴史的意義を成し遂げた会社なのだ。今回はさらに市民新聞を知るために岡谷市にある市民新聞本社に伺った。 お話を聞いて、市民新聞には読みやすさにこだわったさりげない工夫がいっぱいだと思った。まず、紙だ。市民新聞グループ7紙は、文字を読みやすく、カラー印刷の発色を良くするために特注の紙を使っているのだ。一字一字を広めに、やや太めて(ふところの広い文字と言うそうだ)特注したフォントを採用していて本文の文字も読みやすい。年配の方にも手にとってもらえるようにとの配慮でもあるのかと思う。内容は、地域で起こったさまざまな出来事や地域行事、会合、お悔やみの知らせなどで構成される。 面白いのは7つの市民新聞を並べて見てみると、各記事の一部がリンクしている点だ。ためしに岡谷市民新聞を開くと、何ページ目からか岡谷以外の6紙の一面の記事もすべて見ることが出来る。これによりグループすべての新聞にボリュームが出て読み応えも十分、さらに地域をヨコに斬った内容は他の地域紙には出来ない市民新聞グループ独自の魅力である。また、地域紙は小回りがきくので良い。例えば、真夜中に事件が起きたとき、午前二時のタイムリミットに間に合うようであれば、わざわざその記事を入れて、もう一回刷りなおして配ることをする。鮮度が命の市民新聞なのだ。また、今週の催しごとや道路工事の情報等を「セクション」という色紙を使っている。一割ほど紙代が高くなるそうだが、目に付くし、他の古新聞とまとめて捨ててしまうこと防止できる。特に家庭では、催しごと等のお知らせの類は冷蔵庫の裏とかに貼っておきたいものでもある。だからあえて別冊にし、セクションを使う価値はあると思う。あと、地域新聞だけに地域の広告が多いのも市民新聞の特徴である。見た感じで、およそ3分の1か4分の1が大小の広告で成っている。広告代理店を通さないで編集局で広告を作るため、少し安く載せることができるので依頼は多そうだ。 市民新聞は最初から「他の新聞との併読を狙った新聞作り」をしている。にもかかわらず岡谷市民新聞の購読率およそ93%と非常に高い数字が出ている。市民新聞を購読することによって、全国紙ではまかないきれない毎日の必要な情報が補えるということだ。もう市民新聞なしでは考えられない、生活の一部になってしまったという家庭もあるだろう。そんなわけで、これからも地域に愛される新聞を作りつづけてほしいと思う。 市民タイムス 市民タイムスは昭和46年10月1日に創刊されて以来お茶の間に身近なニュースを提供しつづけてきた。去年の10月には創刊30周年を迎え、「日本一の広域日刊地域紙」と呼ばれるまで成長した。発行エリアは松本平22市町村(松本市、塩尻市、南安曇郡、東筑摩郡全域)で発行部数は66,407部(平成14年2月)。特に普及率をパーセンテージに直してみると、松本版(61.01%)、塩尻版(31.72%)、安曇野版(50.98%)、東筑北部版(70.49%)。市民タイムスがどれほど読者に愛されているかがわかる。いや、愛されていると言うより当たり前の存在という感じだろうか。それはまさに市民タイムスが目指す「肌着のような新聞」に限りなく近いと思う。会社は今回見学させていただいた松本市にある本社の他に、安曇野と塩尻にそれぞれ支社があり、明科と長野に支局を置いて、さらに東京の通信部を入れた6つの場で成り立っている。また、両支社には「山光ホール」と「塩尻ホール」があり、各種展示会や講演会、コンサートなど多目的に使えるスペースとして開放し、地域のみなさんとコミュニケーションを図っている。こんなところも地域密着型の良いところだろう。では、実際見学したり、話を聞いたりしてみて気づいた点や感想等を述べようと思う。まず職場の年齢層が若い(確かに平均年齢30歳ほどだと聞いてはいたが)ことに驚いた。自分とさして変らないような年代の社員を見ていると、編集者が急に身近に思えてきて嬉しい驚きがあった。 しかし採用担当者の方は「採用は地域の住民に限定してるんですが、希望者はけっこう多くて大変なんです。親戚のコネで入れてくれという困った人もいますし。だから第一次の入社試験をものすごくむずかしい問題を出すんです。一次で手ごたえを感じさせてしまってヘタに期待させては悪いでしょう」と半ば苦笑いで話してくれた。そんな裏話も聞いたせいか、私はますます市民タイムスの若手社員に尊敬してしまったのだ。因みに現在の社員の男女比は約7:3だそうだ。一昔前は5:5くらいだったので、少し女性の勢いが落ちたかなという感じなのでぜひ女子に頑張って欲しい。 紙面の内容も全国紙とは違う。地域の文化、催し物のページが多く、続いてスポーツ(スポーツと言ってもプロ野球とかの結果ではなく、まさに地域の少年少女のスポーツクラブ、小中学校の部活動の結果や「早起き野球」というこの地域独自の草野球のようなものの試合結果が載っている)などで構成されている。あと、面白いと思ったうちの一つで「さわやかさん」という記事があるのだが、これは職場や学校で感じのいい女の子を紹介するという市民タイムスの人気コーナーである。新聞を見てどこに住んでいるのか教えて欲しいと本気で編集部に電話をかけてくる困った(?)人もいるそうだ。電話といえば、市民タイムスでは「市民の広場」という欄を設け、毎日の暮らしの話題や楽しい話、暮らしの知恵などを気軽にお電話くださいと呼びかけている。自分の声が直接紙面に載るのは読者側も嬉しいし、新鮮な情報や意外な視点からの意見を提供してもらえる編集側もありがたいしでいいことずくめだと思う。また、「情報スペースザクザク」で譲ります・買いますのお知らせや、求人募集等に利用したり、「お悔やみ申し上げます」欄でご不幸があった家にすみやかに対処するのに役立つ。地域に密着した広告なども比較的安価に掲載できて、読者同士の情報交換の場としての面でも市民タイムスは活躍しているのだ。これからも40、50周年を迎えるたびに、さらに皆に愛される市民タイムスになれば良いなと思う。 |
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