山田晴通:担当している講義科目


1996年度


明治学院大学(一般教育部) 日本大学(文理学部) 東京大学(教養学部) 東京経済大学(コミュニケーション学部/経済学部)

地理学

明治学院大学一般教育部(月曜日:1時限:通年)


「一般教育ガイドブック」より抜粋

講義のねらい
 明治学院大学には、地理学の専攻課程はない。教職を目指す少数の諸君を別にすれば、この講義は諸君にとって人生最後の地理学の講義となろう。そこで、この講義では、一般教育の範囲を逸脱しないよう配慮しつつ、今日の人文地理学の全体像が理解できるように、学史を軸とした入門講義から、地域イメージをめぐる文化地理学、社会地理学の議論の紹介まで、広汎な範囲を扱いながら駆け足で講じていくことにしたい。

講義の進め方
 講義の最初に取り上げるのは、(人文)地理学が近代的な大学制度の中に位置づけられた十九世紀以降の学史である。ただし、専門的な学史研究を講じるわけではなく、現代に直結する時代に、地理学において何が課題として提起され、どんな方法が生み出されてきたかを、一つの流れとして概括的に理解することが目標となる。続いて、教科書に入るが、この本は文化地理学・社会地理学の立場から、メディアと地域イメージの諸問題を論じた、先駆的な論集の邦訳である。まず、理論的な整理をしている第一章を読み、議論の枠組みを理解する。この部分では、人文地理学以外の分野についても、一定の知識が要求されるが、講義では、地理学的知識はもちろん、他の分野についても、大いに「脱線」しながら、受講者諸君に浅く広く雑学的知識を伝え、以降の議論への理解が一層深まるように考慮したい。次いで災害をテーマとした小説や映画を論じた第四章、テレビの風景ドキュメンタリー番組を論じた第七章を、順次講読していく。フィクションであれ、ドキュメンタリーであれ、視覚的メディアが地域イメージなどをどのように構築しているのか、購読を通じて諸君と一緒に考えていきたい。なお、講義の進行状況によっては、教科書以外から関連文献を選んで読むことがあるかもしれない。

教科書
 バージェス&ゴールド編『メディア空間文化論』古今書院


地理学

明治学院大学一般教育部(月曜日:2時限:通年)


「一般教育ガイドブック」より抜粋

講義のねらい
 明治学院大学には、地理学の専攻課程はない。教職を目指す少数の諸君を別にすれば、この講義は諸君にとって人生最後の地理学の講義となろう。そこで、この講義では、一般教育の範囲を逸脱しないよう配慮しつつ、今日の人文地理学の全体像が理解できるように、学史を軸とした入門講義から、地域イメージをめぐる文化地理学、社会地理学の議論の紹介まで、広汎な範囲を扱いながら駆け足で講じていくことにしたい。

講義の進め方
 講義の最初に取り上げるのは、(人文)地理学が近代的な大学制度の中に位置づけられた十九世紀以降の学史である。ただし、専門的な学史研究を講じるわけではなく、現代に直結する時代に、地理学において何が課題として提起され、どんな方法が生み出されてきたかを、一つの流れとして概括的に理解することが目標となる。続いて、教科書に入るが、この本は文化地理学・社会地理学の立場から、メディアと地域イメージの諸問題を論じた、先駆的な論集の邦訳である。まず、理論的な整理をしている第一章を読み、議論の枠組みを理解する。この部分では、人文地理学以外の分野についても、一定の知識が要求されるが、講義では、地理学的知識はもちろん、他の分野についても、大いに「脱線」しながら、受講者諸君に浅く広く雑学的知識を伝え、以降の議論への理解が一層深まるように考慮したい。次いで、両大戦間期の映画に描かれた未来都市のイメージを論じた第六章、英国における1981年都市暴動の報道を地域イメージの視点から分析した第九章、地域紙の犯罪報道によって形成される都市像を取り上げて考察した第十章を、順次講読していく。これらの各章における議論を通じて、二十世紀の英国における都市の住環境の諸問題について理解を深める。また、必要に応じて地誌的な背景説明も盛り込む。

教科書
 バージェス&ゴールド編『メディア空間文化論』古今書院


地理情報処理I

日本大学文理学部(月曜日:5時限:前期)


「講義要目」より抜粋

授業概要
 全くの初学者であることを前提に、パソコンの基本的な使い方と、日本語ワープロソフト「一太郎」の操作を学ぶ。ただし、実習課題には、地理学調査や論文作成の際に必要となる文書を取り上げ、地理学的研究の基礎を成す情報処理がどのようなものかを経験させる。

授業計画
 情報処理機器の基本的性格と、実習に用いる機材について解説した上で、キーボードに慣れるために「一太郎」の操作を学ぶ。課題としては、通信文(調査依頼など)、簡単な図表の入ったレポート、文献表、などの作成が課される。
 毎回、一定の課題に沿って、新しい操作を指示していく。場合によっては、当該時間内の成果を提出してもらうこともあるし、宿題という形にすることもある。総じて課題には、相当の時間を割く覚悟が必要となる。
 なお、既に、一定の水準で「一太郎」を操作できる者には、別途課題を与える。いずれにせよ、授業の進度や水準は受講者を見て考える。


地理情報処理II

日本大学文理学部(月曜日:5時限:後期)


「講義要目」より抜粋

授業概要
 初学者であることを前提に、簡単なデータベース機能の付いた表計算ソフト「ロータス123」の操作を学ぶ。ただし、実習課題には、地理行列型のデータを取り上げるので、地理情報の処理に特有の問題について、重点的に説明していく。

授業計画
 表計算ソフトの基本的な機能について概説した上で、「ロータス123」の操作を学ぶ。課題としては、簡単な地理行列型データの作成、加工、作表、図化などを、国勢調査、人口・世帯数表、新聞の発行部数といった例に即して、取り上げていく。
 授業の進め方などは、地理情報処理I(山田晴通)に準じる。従って、課題には、相当の時間を割く覚悟が必要となる。
 なお、既に、一定の水準で「ロータス123」を操作できる者には、別途課題を与える。いずれにせよ、授業の進度や水準は受講者を見て考える。


応用地理

東京大学教養学部(火曜日:4時限:後期)

「授業内容」アンケートへの回答から

 応用地理学(applied geography)という概念と、その問題点について検討を加えた上で、人文地理学的研究の政策的応用という視点から若干の事例を紹介していく。特に、「地域情報化」をめぐる、わが国の状況について、検討してみたい。


経済地理

東京経済大学経済学部(木曜日:4時限、7時限=2部2時限=:通年)

「講義概要」より抜粋

講義表題
 経済立地論の基礎

講義内容
 通常の経済学が、空間を捨象した「一点世界」におけるモデルとして想定されているのに対し、経済地理学は経済現象の空間的展開を把握し、現象の背後にある理論を抽出することを目指している。換言すれば、空間を捨象した経済学理論との接合が可能な形で、経済現象の空間性についての理論を定式化することが、経済地理学の大きな課題の一つなのである。
 こうした経済現象の空間性に関わる諸理論の中でも、最も古典的な産業立地論を講じながら、モデル構築指向の経済地理学の議論を紹介していく。

講義計画
 教科書は4つの章から構成されているが、そのうち第1章から第3章までを講義していく。ただし、講義の進度に応じて、内容の一部を省略して進めていくこともある。以下にあげるのは、教科書の目次の抜粋(ただし、〔 〕内は山田の補足)であるが、だいたい1節に授業4回前後を費やしていきたい。
   1 地理学の理論化
   1.1 本書の成り立ち
   1.2 科学的説明-Thunenの農業立地論の導出にことよせて
   2 立地
   2.1 中心地の立地〔Christallerモデル〕
   2.2 工業の立地〔Weberモデル〕
   3 相互作用と拡散
   3.1 空間的相互作用〔Reilyモデル、Huffモデル〕
   3.2 空間的拡散〔Hagerstrandモデル〕

教科書
   ・杉浦芳夫『地理学講座5 立地と空間的行動』古今書院,1989


特別講義・ポピュラー音楽史概説

東京経済大学経済学部(木曜日:6時限=2部1時限=:通年)

特別講義・計画書から

趣 旨
 ポピュラー音楽の歴史を、社会的背景などに注目しながら、一年間をかけて講じていく。大学の講義として、こうした内容を講じることは、音楽系の大学を除けば、まだまだ一般的ではない。例えば、明治学院大学文学部芸術学科では、同学科が新設された1991年度に細川周平氏が、1993年度には山田が「ポピュラー音楽概論」を講じたが、この科目は、その後のカリキュラム改編で廃止されている。
 今回、特別講義として提案する「ポピュラー音楽史概説」も、大学の講義科目名としては奇異な印象を与えるものであるかもしれない。しかし、ポピュラー音楽がシリアスな研究の対象たりえること(ポピュラー音楽研究を専門とする学会も既に存在している)、また、シリアスな教育テーマたりえることは、しっかりと強調されるべきであろう。
 コミュニケーション研究は、様々な形で大衆文化研究と密接な関係を持っている。大衆文化の中でも、社会的に共有される広がりが大きいとされるポピュラー音楽についても、ベンヤミン/アドルノの論争から、近年のいわゆる文化研究学派(Cultural Studies)などまで、コミュニケーション研究の成果と接合した形での議論が積み重ねられてきた。この講義では、そうした蓄積を利用しながら、ポピュラー音楽というとりつきやすいテーマを導入路として、文化史、社会史、あるいは技術史といった切り口から、歴史的現象の多面的な展開を考えていく機会、社会の中でのコミュニケーションの機能について考えていく機会を学生に与えるようにしたい。

 なお、本講義は、6号館地下1階のスタジオを用いて行いたい。講義の実践を通じて地下スタジオの「使い勝手」を探っていくことは、この講義のもう一つのねらいでもある。

講義概要
 ポピュラー音楽は、現代社会において大衆文化現象の大きな一分野を成している。大量複製技術を前提とし、その技術的基盤の上に大量生産〜大量消費される「商品」として社会に普及してきたポピュラー音楽は、あるいはマス・コミュニケーション過程の中で娯楽機能を担うものとして、あるいは社会/大衆/民衆の精神なり雰囲気を反映するものとして、また、形成するものとして、あるいは人々の態度の変化や行動を引き出し、社会を組織するものとして、様々な視点から論じられてきた。この講義では、現代社会を特徴づける文化現象であるポピュラー音楽とそれに関わる諸現象の歴史を、文化的、社会的、技術的背景など、複眼的な視点から読み解いて考えていく。
 具体的に考察の対象となるのは、欧米の20世紀のポピュラー音楽(日本で「洋楽」として認知されている類のポピュラー音楽)、特に「ロック音楽(Rock music)」を中心とした、20世紀後半のいわゆる「ロック時代(Rock era)」の音楽を詳しく扱うが、本格的なポピュラー音楽が登場する以前の19世紀や、20世紀前半における大量複製技術と音楽の関係、現代の非欧米圏(日本なども含めて)における「ロック音楽」についても、視野に入れて議論を進めていく。

 講義は、以下のテーマについて、原則としてそれぞれ2回にわたって論じていく。

[前期]

  1. ポピュラー音楽を論じる意義
  2. 大量複製技術の発展とポピュラー音楽の形成
  3. 最初のポピュラー音楽
  4. ポピュラー音楽としてのジャズ
  5. ロックンロール出現前後
  6. 技術的転換期としてのビートルズ

[後期]

  1. 社会意識とビートルズ同時代の音楽
  2. ハードロックからヘヴィ・メタルへ
  3. プログレからテクノへ
  4. 社会的背景から見たイギリスにおけるパンク
  5. MTVと映像の呪縛
  6. ロック音楽と非欧米圏

 講義全体を通しての教科書はないが、理解を助けるための参考書として、<北中正和(1985)『ロック』講談社現代新書>を用いる予定である。

臨時レポートのおしらせがあります。

『東京経済大学報』に寄稿した、「特別講義『ポピュラー音楽史概説』の概説」のフルテキスト。


フレッシュマン・ゼミ

東京経済大学コミュニケーション学部(金曜日:1時限:前期)

「シラバス」より抜粋

演習表題
 ゼミナールの「掟」を学ぶ

演習内容
 ゼミナール=演習という形式は、大学教育においては重要な位置を占めるものであるが、高校までの教育にはほとんど取り入れられていない。フレッシュマン・ゼミでは、まずゼミという形式に慣れ、自発的に学び、考える姿勢を身につけることが第一の課題となる。具体的には、共通の課題図書を選んで輪読し、その内容について報告し、討論する経験を通じて、
    ・報告要旨の作り方
    ・プレゼンテーションのコツ
    ・協調的で創造的な議論の作法  など
ゼミを運営していく上で必要な事柄が身につくように指導する。
課題図書は、できるだけコミュニケーション論以外の分野(ただし何らかの意味での隣接分野)から、専門性があまり高くない新書程度のレベルのものを選び、半年かけて読破する。隣接分野について浅く広く知識を得ることは、このゼミの第二の課題である。課題図書の最終的な決定は、ゼミ参加者と相談した上で行うが、次に「教科書・参考文献」として挙げるものの中から選ぶ予定である。2冊以上読む場合の2冊目以降は、参加者の希望を活かしていきたい。

参考文献
   課題図書の候補
    橋爪大三郎『はじめての構造主義』講談社現代新書
    西尾幹二『「労働鎖国」のすすめ』PHP文庫
    上野千鶴子『スカートの下の劇場』河出文庫

(補足)今年度は、結局、上野千鶴子『スカートの下の劇場』1冊を読んだ。


データ・アクセス法

東京経済大学コミュニケーション学部(金曜日:1時限:後期)

「シラバス」より抜粋

授業表題
 文献情報を中心とした情報検索の方法

授業内容
 オン・ライン/オフ・ライン、あるいは、エレクトロニック/ノン・エレクトロニックの違いを問わず、一般的にデータを収集をする上で表面化する諸問題を論じた上で、文献情報データベースへのアクセスを中心に、具体的な実習を行う。具体的には、大学図書館の館内システムや、多数の図書館を結ぶネットワーク(学術情報センターのシステムなど)について、その仕組みを理解し、実際の利用方法を実習するとともに、CD−ROMの形態で利用できる文献の総目録としてのデータベース(J−BISCなど)や、特定分野に関する専門的な文献データベース(例えば、音楽分野におけるRILMなど)、新聞の見出しデータベース(CD−ASAXなど)についても講義と実習を通じて理解を深める。
 一応、以上のような内容を予定しているが、利用可能な教材の整備状況によっては、内容を変更することもあり得る。

授業計画
 半期の講義を通して、授業二〜四回程度を一つの区切りとして、次の四つのテーマを順次取り上げながら授業を進めていきたい。
   ・文献情報の基本的問題
   ・図書館内の文献情報
   ・データベースの諸形態
   ・ネットワークの利用
 なお、講義の必要から、通常の教室以外の場所(学内)で授業をすることもあるので、常に注意しておくこと。

(補足)インターネット環境の整備が進んだことを踏まえ、インターネットを利用した情報検索について比重を置いた講義にしていく予定である。

受講予定者へのおしらせがあります。


地域のコミュニケーション

東京経済大学コミュニケーション学部(金曜日:2時限:通年)

「シラバス」より抜粋

講義表題
 「地域」と「コミュニケーション」の諸問題

講義内容
 コミュニケーションをめぐる議論は、社会総体を対象とする普遍的なマス・コミュニケーションの問題として、個人レベルのパーソナル・コミュニケーションの問題として論じられる場合が非常に多い。言い換えれば、中間的な、「地域」のスケールで論じられるべき問題は、見落とされがちなのである。コミュニケーションをめぐる諸問題のうち、マス・メディアに見られる地域間の差異、地域メディア、コミュケーション形態にみられる地域性、あるいは、マス・メディアの流す地域イメージなどは、そのような問題の例である。こうした地域のコミュニケーションをめぐる諸問題について概説するとともに、「地域」スケールの問題意識が、マス・コミュニケーションやパーソナル・コミュニケーションに対して提起していく課題についても論じる。

参考文献
 随時指示する。ただし、意欲のある者には、次の二冊が役立つだろう。
   ・竹内・田村・編『新版地域メディア』日本評論社
   ・大石 裕『地域情報化』世界思想社

講義計画
 一年の講義を通して、授業二〜四回程度を一つの区切りとして、次の四つのテーマを順次取り上げていく。ただし、取り上げる順序などは、多少変更が生じるかもしれない。
   ・「地域」と「コミュニケーション」の結びつき方
   ・「地域メディア」の位置づけ
   ・日刊地域紙
   ・CATV
   ・その他の「地域メディア」
   ・「地域情報化」政策
   ・地域社会の変化とコミュニケーション
   ・「地域イメージ」の諸問題

臨時レポートのおしらせがあります。


コミュニケーション演習I

東京経済大学コミュニケーション学部(土曜日:1時限:通年)

「シラバス」より抜粋

演習表題
 地域メディア論

演習内容
 地域社会において、コミュニケーションの担い手として一定の役割を果たしているのが、「地域メディア」と総称される諸媒体である。具体的には、地域紙、タウン誌、CATV、ミニFMなど、様々なものが「地域メディア」の例であるが、中でも日刊地域紙と、自主放送チャンネルをもつCATVは、とりわけ重要なメディアである。
 この演習では、日刊地域紙と自主放送CATVの両方が存在する地域を選び、文献購読や現地調査を通じて、「地域メディア」が地域の中でどのように支えられているのか、といった問題について考えていく。
 演習の性格上、時間割の外での拘束もあるし、ゼミの運営は強いコミットメントを要求する形で進めていく。参加者は、「カネ」、「ヒマ」、「根性」のうち少なくとも二つは充分に備えていること。

(補足)現在は、
   ・竹内・田村・編『新版地域メディア』日本評論社
の輪読を進めている。また、夏の合宿は、長野県松本市周辺の諸媒体を見学する予定。


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