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京滋地区私立大学非常勤講師組合:「くみあい通信」記事等:1995


京滋地区私立大学非常勤講師組合:「くみあい通信」記事等:
  1. 非常勤組合通信発刊に際して(創刊号 1995.11.15.)
  2. 『使い捨てられる非常勤講師たち』を読んで(創刊号 1995.11.15.)
  3. 集団懇談会から個別懇談会へ そして、3月7日第2回大会(第2号 1996.2.15.)
  4. 第9号の記事から(第9号 1997.7.8.)

[1]非常勤組合通信発刊に際して(創刊号 1995.11.15.)

  非常勤組合通信発刊に際して

京滋非常勤組合委員長 林誠宏      

 一九九五年二月六日の準備大会を経て、組合員のみなさんの多大な御支援・御協力のもとに、七月十九日に組合は正式に結成されました。その間、各大学の専任教員のみなさんによる物心両面にわたる御協力・御支援は、組合結成に取り組んできた非常勤講師組合員に大きな力と励みを与えました。
 今日、大学改革という名のもとに行われている様々な状態は、教学のパートナーである筈の非常勤講師に対して、残念ながら、極めて好ましくない方向に向かっていると言わざるをえません。
 非常勤講師という立場が、かつてのプロモートの前段階から、ひとつの職業となっている現在、大学改革の中で、いかに教学のパートナーを守り育てるのかという問題が、厳しく問われねばならないところにきていると言えるでしょう。しかしながら、現状は必ずしもそうした方向に動いているとは思えません。
 もし、大学が確固とした教学の理念を打ち立てることができず、パートナーとしての非常勤講師の立場、あり方を正しく認識しないならば、大学存続の足場を危うくすることになるでしょう。
 幸いにも、非常勤組合の要請に対して、京滋の各大学から丁重な御返答を頂きました。今後、非常勤組合は各大学と充分な話し合いを重ね、一歩一歩肯定的な未来を切り開いていきたいと考えております。
 今後とも、組合員のみなさんの御支援・御協力、また各分野の方々のご協力をお願いする次第であります。


[2]『使い捨てられる非常勤講師たち』を読んで(創刊号 1995.11.15.)

  『使い捨てられる非常勤講師たち』を読んで

小林康則      

 表題を含む本が最近出版された。読んでいて、なるほどとうなずけることばかりである。作者はずいぶん悲哀を感じてこられたことであろう。今の私たちに、ずばりあてはめることができる。
 私たち非常勤で授業を受け持っていても、それなりに授業の準備や下調べに時間とお金をかけて、万端用意を整えて授業にのぞんでいるのに、その、いわゆる研究費というものがなく、毎月の手当の中から捻出している。こうした書籍代とか、学会や研究会のための費用とかは、一切、税金の控除対象にならないものである。また、年金とか健康保険なども、一切自己負担である。これらのことは表題の文章の中では述べられていないが、作者も同じ気持ちであったにちがいない。私は、心ひそかに、せめて一コマあたり3.5〜4万円あれば、一応十コマ担当すれば、自分の研究のための時間がひねり出せるのにと思っている。
 また、来年度の担当するコマ数も心配の種である。今、大学のリストラやら何やらで、持ちコマが減りそうな気配である。これも大いに収入に影響してくる。このような心配は、私たち非常勤講師には、いつもついてまわる。いつもいつも自転車操業のような私たち非常勤講師がいなければ、大学の授業が成り立っていかないのに、学問の府といわれている大学で、なぜこのような非民主的なことが起こるのか。実に不思議でならない。
 専任の先生方と同じ様に、一所懸命に授業しているのに、他の職種のパート労働者よりもずっと悪い待遇に、いつまでも我慢できるのか。
 こうした弱い立場にある私たち非常勤組合の結成を作者が知り、この文章の附記として紹介してくれている。
 今、まだ力は弱いが、時の要求に乗って、私たちの組合を強いものにしていかなければならない。
 皆さんの心強い団結の力を発揮してほしい。


[3]集団懇談会から個別懇談会へ そして、3月7日第2回大会(第2号 1996.2.15.)

 当組合は12月20日付けの書信で、各大学理事会との集団懇談会への出席要請を、同志社大学、立命館大学、京都産業大学、龍谷大学、同志社女子大学、京都女子大学、京都学園大学、京都精華大学、京都薬科大学の九校へ送付しました。
 私たちは、当初この懇談会において、通常の労使交渉の前に、関係各大学と山積する諸課題を整理し、双方の意志疎通をはかり、一致点を見出す場となることを願って準備を進めてきました。その際、組合の第1回大会で掲げた諸課題の内、当面緊急する課題として次の三点について、十分に話し合うことを目的として臨みました。
 1)大学教育における非常勤講師の位置付けと社会的役割の問題
 2)基本賃金の改善(ミニマム要求の1コマ3万円)、夏季・冬季一時金の支給
 3)健康診断・社会保険などの非常勤講師の健康管理の問題
 私たちは、大学教育におけるパートナーとして、大学「改革」を本当の意味での「改革」にすることを願っていますが、従来のような時間請負的なパートタイマーにすぎないのか、それとも専門的高度職業人としての役割を担う得るのかということを大学当局に問いかけてきたのです。
 しかし、残念ながら1月25日の集団懇談会はすべての大学が欠席しました。急遽、当非常勤講師組合と私大教連との合同会議として今後の対応を練り直す会としてもたれました。まず、当組合宛に送られてきた各大学(学校法人)理事会の回答書を明らかにし、懇談会開催までの私大教連の組合を通じた大学当局側への働きかけの状況などが報告されました。各理事会の回答書はおおむね次の通りです(裏面に原文掲載)。
 同志社・龍谷大学ー大学独自の課題であるので、直接意見を聴きたい
 立命館大学ー「労使交渉を前提に話し合いを行う場」に一同に会する方法は馴染まないので欠席する。
 京都産業大学・京都精華大学ー開催には欠席します。
 このような状況を踏まえて、会では今後の対応を協議しました。各理事会が、話し合いは集団ではなく個別開催を要望しているので、私たちもこれを尊重して96春闘を視野に入れながらできるだけ早期に個別懇談会を実現することを確認しました。
 さらに、私立大学をめぐる状況報告の中で、京都産業大学で、非常勤講師の解雇問題が起こっており、当組合委員長への問い合わせの電話が多数あること、また京都産業大学組合と大学当局との間にも緊張したやり取りが続いていることが報告されました。この問題としては、非常勤講師組合としても、組合員の利益を守るために奮闘することはもちろん、非組合員であっても、主体的に戦う姿勢を持つ非常勤講師とも連帯しながら、私大教連とも情報交換をし、今後の事態の推移を見守ることにしています。(一月二五日)

 個別懇談会が以下の日程で開催されることが決定しました。
 二月二一日 龍谷大学  二月二三日 同志社大学
 なお、立命館大学、京都産業大学とは目下交渉中です。
 同時に3月7日に第2回大会を開催することが執行委員会で決定しました。(二月九日)


[4](第9号 1997.7.8.)第9号の記事から

●ますます伸びる組合:協賛者など増える・7月には個別交渉

 京滋私大非常勤組合もまもなく結成後2年を迎えます。今年に入ってからも組合員・賛助会員・支援カンパ者が増加しています。
 また大学が行う定期健康診断を非常勤講師も受けることができるようにしてほしいという要求も実り、今春から京都産業大が・今秋から同志社大などで受診できるようになりました。立命館大も非常勤講師でも受診できることを公示するようになりました(これについては立大の谷中さんが診療所では公には非常勤を健康診断しないと言っていたと報じた)。受診された方の感想では丁寧によく診てくれたとのことです。
 ただ京産大では掲示が限られた場所で目に留まりづらかったのは改善が必要です。
 さらに同志社大では非常勤講師への産休適用の確認もなされました。
 7月に入りますと賃金など共通の要求と各大学の勤務者より出された大学毎の特別な要求事項をもって、立命大・京産大・龍大・同志社大と、個別交渉が持たれます。

●6月28日(土)2度目の非常勤講師問題フォーラム開かる!

フォーラム:非常勤教員問題をめぐって
⊃ 音楽もステキ・お話も懇親会もオモシロカッタヨ ⊂

 春休み3月8日につづいてまたも非常勤講師をテーマにしたフォーラムが開かれました。朝日新聞京都版でも報道されたとおりです。会場‘び・ぜん・ぎゃるり’周辺は地下鉄「国際会館」駅が開かれ便利になった地区です。モダンな入り組んだ建物できょろきょろ見回すことしきり。階段状の中ホールにたどりつく。
 なんとスタートはバイオリン・チェロ・ビオラ・ピアノの多重奏、スメタナやバルトークの名曲がブンブン・ムームー・ピンピン響く。参加者から「これぞ名人芸」と絶賛されました。artistsの長山いづみさんほか音楽大学非常勤講師・音楽ユニオン会員の皆様、ありがとうございました。

 ついでお二人の報告を受け、質疑・討論が行われました。大阪電気通信大学教職組書記長 温井信正 氏は、これまで同組合で非常勤給・解雇問題に携わってきた具体的経験を話して下さりました。幾つかお話を拾ってみます。同大学では非常勤講師でも週3日5コマ以上担当すれば私学共催に加入できるのですが、専任の側が非常勤講師にそのようにコマを担当できるように時間割を組んでやらねばならない。受講者数百名の大講義の問題も単に開講時間数を増やせと要求しても講義室の絶対数の不足という壁もある。そうした事情を知っているのは専任教員である。こうしたことからも専任と非常勤の交流が密であることが大事とのことでした。
 東京都区関連一般労組大学非常勤講師分会委員長 斉藤吉広 氏は、近況について、大月市の短大で16年非常勤給与規定が変わらなかったのを指摘したら、すぐ改定してくれたこと、今年に入ってもほとんどの解雇問題が組合が参加して交渉することで撤回や有利な和解の解決にいたった様子をユーモアのある語り口で報じ、立教大学の5年制の嘱託教員制度の実施後の実状にも触れました。そこでは5分刻みと言っていいほどに専任が決めたマニュアル通りに教えろと要求されているそうです。大学にとっては安上がりだが、本当の意味の教授経験が着かず(←「いかせず」と森田さんが直した)結局大学の教育力を養うのにマイナスではなかろうかと危惧されていました。

 閉会後もスパゲティハウスで懇親会が行われ、各テーブル毎に大学の教育や労働条件などの様々なテーマで話の花が咲きました。ここでさらに、初めておいでになられた方々・前々からお名前はうかがっていたがこんなところで会うとは思わなかったという方々と親しくお話しできて、いっそう人の輪が広がり一同たいへん楽しく、嬉しい気持ちで折から台風の接近で風雨強まるなかを帰路に着きました。

●小林康則 語る!「関西教授会連合 第2回 研究会」で
非常勤教員の立場から見た任期制導入問題

 本組合の現委員長 小林康則が国庫助成に関する私立大学教授会関西連絡協議会の第2回研究会で上記の題下、現在の非常勤講師の状況を紹介しながら、任期制についての所感を述べた。
 現在の非常勤講師も毎年10月ごろになれば来年の担当コマ数はどうなるんだろうかと心配になる、もし翌年収入が減ると税金は前年度所得の申告で掛かるからたいへんになる、研究には海外留学も有効なことがあるが、任期制が導入されたらどうなるのか? 結局、任期制が取り入れられたら本当にじっくりした学生の指導ができていないなんてことになろう。
 そして曰く「...だけど、本当に文化というものは一日にして成り立つものじゃなくて、ずっと研究していって長いことそれを作り変えて学生に返していっておられるはずなんです。それを任期制で切っていく、日本の文化を一体どう考えているんだ、世界の文化をどう考えているんかと、そんなふうな感じです。本当に日本の文化を切り刻んでいく変な制度だと私は思っております。」
 また専任の教員の皆さんも自らへの任期制導入問題が出た機会に、現在の非常勤講師を単なるアシスタントではなくよきパートナーと見て、扱われるよううったえたのでした。

●長山いづみ「くらしき作陽大学音楽学部ピアノ非常勤講師問題の経緯:音楽家ユニオンと友に年間戦ってみて」(略)



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