フィルタリング導入問題について山田が出したメール


Date: Fri, 3 Apr 1998 22:16:08 +0900
Subject: フィルタリング問題についての暫定的私見

東経大関係者 各位

コミュニケーション学部、山田です。

フィルタリング問題について現段階での暫定的な私見を表明します。

現段階では、私としては、
「そもそも一般的にフィルタリング自体が容認できない」
という立場には立ちません。
そこまで言い切れるほどフィルタリングについて理解していないからです。

しかし、今のところ理解してる範囲の知識に基づいて、一定の見解を表明することは、本学におけるコミュニケーション教育に従事する者として、責務であると感じておりますので、敢えて見解を表明いたします。


フィルタリングについては、これを推進する側の立場から次のような提起がなされています。

「学習教材としてのインターネットとフィルタリングの必要性」
江澤 義典 (関西大学教授/情報倫理協会会長)
http://homeweb.hotline.co.jp/~tomando/janl/ezawa.html

この文章においても次のような議論がなされている点には注意が必要だと思います。

<以下、引用>
現代においては、表現の自由が社会で認められているので、例えば、ホームページを 作り情報発信を行う人には自己の信念に基づいて情報を発信する自由があります。し たがって、望ましくないと思われる内容であっても、その情報の発信自体を制限する のではなく、受信者側でアクセスする人自身がが自分の見たくないもの、自分に関係 した子ども達に見せたくないもの、学校教育の場に相応しくないもの等を自主的に回 避する手段が望まれるのです。
<引用おわり>

つまり、大学を含めた学校教育の場に相応しいかどうかは、大学が自主的に、言い換えれば自治の問題として、判断すべき議論だと言うことです。その意味では、学内民主主義がここできちんと機能しているか否かが問われているといえるわけです。

また、ここで議論の中心に置かれているのは、もっぱら「子ども」であり、実際に今回東経大に導入されたソフトも、基本的には判断力の未発達な「子ども」を想定したものです。「サイバーシッター」という名称がそれを象徴しています。大学が、学生を「子ども」扱いせざるを得ない部分も抱えていることは事実としても、それを無前提に肯定して大学といえるかどうか、山田は疑問に思います。

インターネットの利用、特に共用施設の利用については、本来は、情報リテラシー教育の中で、そのマナーを教育して行くべきものです。実際、情報教育の担当者や電算室のスタッフは、情報施設利用のルールや、エチケット/ネチケットについて、学生に浸透する努力を払っています。学生が判断する力を育てる努力を行っているわけです。
安易なフィルタリングの導入は、こうした地道な努力を通して学生を「子ども」から「大人」に導こうという努力を無にするものです。安易なフィルタリングの導入は、現在、実習室等で問題になっている環境型セクシュアル・ハラスメントの問題(人権委員会は何らかの取り組みをしているのでしょうか?)の解決につながらないばかりか、むしろフィルタリングをゲーム的にくぐり抜けることを促すことにもなりかねません。

ネチケットについて、セクシュアル・ハラスメントについて、正しい教育、啓蒙を徹底する....その中には、当然、公正な形でその問題について公に議論することが含まれます....それこそが、コミュニケーション教育を世に問うている本学に課せられた課題であるはずです。

この問題については、次の二つの話題を分けて議論すべきであると思います。

1)現に問題となっている、環境型セクシュアル・ハラスメントに対する有効な対策の検討

2)何らかの形でのフィルタリングを導入するとして、その方法・形態についての全学的な議論と、「学校教育の場」という視点からのフィルタリングの位置づけについての統一見解の検討

以上、暫定的な見解といたします。
ご意見をお寄せ頂ければ幸いです。

山田 晴通
Date: Sat, 4 Apr 1998 11:55:42 +0900
Subject: フィルタリング問題についての暫定的私見(2)

東経大関係者 各位

コミュニケーション学部、山田です。

フィルタリング問題について現段階での暫定的な私見の続きです。

本日(4月4日)、サイバーシッターについての関連情報をウェブ上で読んでみました。

トップページはここです。
http://www.iqs-j.com/CYBERsitter/top.html

また、ここにも情報があります。
http://www.mictokyo.co.jp/mic/cnc/nativenews/native000279.htm

このソフトの機能は非常に強力です。
後者のページから引用します。

<以下、引用>
CYBERsitter'97の特徴

1.フィルタリングの動作、停止が簡単。かつ最新フィルターの更新が簡単。
2.更新フィルタ−は月に3回内容変更
3.HTML、検索ページでブロックすることが出来る。
4.URLの変更に対応できる。
5.カテゴリーにある特有な言い回し、業界用語の語句、単語に対応してブロック。
6.レーティングシステム、画像のみのURLを登録してブロック。
7.S-JIS,JIS,EUCに対応。漢字、カタカナ、ひらがな、半角、全角に対応。
8.ポルノ、ギャンブル、オカルト、ドラッグ、暴力のカテゴリ−に対応。
9.世界第2位の販売実績(日本、アメリカ、イギリス、カナダ、ドイツ、フランス、
オーストラリア、スペイン、シンガポールで販売)
<引用おわり>

詳しい細かい仕様を見てみないと判りませんが、
3.,4.によれば、一度有害と判定されたページは、内容を書き改めても排除され続けるように思われます。
また、5.によれば、語句・単語単位で対応するようですが、ソフトが文法構造の解析力をどこまで備えているかにもよりますが、例えばサセックス(Sussex)という地名を含むページも排除される可能性がありそうです(とすれば、語学研修先であるチチェスターの紹介ページなども見られなくなります:Chichester は West Sussex 州の都市)。
6.画像のみのURLがどう定義されるのかわかりませんが、画像内容に関係なくブロックさせるなら不都合が生じそうです。レーティングについても同様でしょう。

2.を見ると、更新フィルターは業者の側で用意するようにも察せられますが、仮にそうだとすると大学としての自主的な判断=業者まかせという考え方でよいのか、疑問に思います。(特に、コミュニケーション学部を抱え、少なくとも世間から見れば「専門家」がいるはずの本学においては、みっともない話だと思います。)
「更新フィルターは業者の側で用意する」という仮定が山田の誤解なら、上の部分は取り消します。しかし、もし自前で更新するならば、その業務は誰の負担で行うのでしょう?また、URLの指定、語句・単語の指定は、誰に権限があるのでしょうか?(これは強力な権限であることを十分認識していただきたいと思います。)

山田 晴通

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