講義のねらい
明治学院大学には地理学科はないので、地歴科の教職を目指す諸君のほとんどは歴史(日本史、世界史)を中心に学んでいることになる。しかし、実際に採用されれば、地理の担当を求められることも当然ある。ところが、諸君の中にも高校で地理を選択しなかった者は多い。また、高校で地理を学んでいても、最近の学習指導要領の改定で、地理の教科内容は相当大きく変化をしている。現在、中学・高校の地理教育の内容には、(大学レベルの)地理学の知識を踏まえた指導を要する部分が大きいのである。そこで、この講義では、そうした授業に必要とされる(人文)地理学の専門的知識や、考え方について講じていく。
講義の進め方
講義では、教科書を、冒頭から目次の順序にしたがて読み進めていく。この教科書は、元々ある女子大学のテキストとして編集されたものであるが、平易な導入から、かなり高度な議論までをコンパクトにまとめた、練り上げられた内容となっている。教科書には、参考図書の章を別として5つの章が設けられているが、このうち、専門性の高い第IV章を除き、残りの各章を一通り取り上げていくことにしたい。
教科書第I章「人文地理学」は、きわめて平易な人文地理学の概説である。第II章「日本経済地誌」は、日本の各地の産業から特徴的なトピックスを取り上げて紹介する構成になっている。第III章「都市地理学」は、都市地理学の基本的な概念を説明し、戦後日本の経済成長と都市構造の変化をまとめて検討している。第V章「野外実習」は、東京近郊を中心に、比較的負担のかからない形で、企画された実習の事例が提示されている。こうした内容の購読を通じて、諸君と一緒に考えていきたい。なお、講義の一環として、野外実習(現地見学)の企画を組むことがあるかもしれない。
教科書
福原正弘『身近な地理学』古今書院
講義のねらい
講義のねらい
明治学院大学には、地理学の専攻課程はない。教職を目指す少数の諸君を別にすれば、この講義は諸君にとって人生最後の地理学の講義となろう。そこで、この講義では、一般教育の範囲を逸脱しないよう配慮しつつ、今日の人文地理学の全体像が理解できるように、学史を軸とした入門講義から、地域イメージをめぐる文化地理学、社会地理学の議論の紹介まで、広汎な範囲を扱いながら駆け足で講じていくことにしたい。
講義の進め方
講義の最初に取り上げるのは、(人文)地理学が近代的な大学制度の中に位置づけられた十九世紀以降の学史である。ただし、専門的な学史研究を講じるわけではなく、現代に直結する時代に、地理学において何が課題として提起され、どんな方法が生み出されてきたかを、一つの流れとして概括的に理解することが目標となる。続いて、教科書に入るが、この本は文化地理学・社会地理学の立場から、メディアと地域イメージの諸問題を論じた、先駆的な論集の邦訳である。まず、理論的な整理をしている第一章を読み、議論の枠組みを理解する。この部分では、人文地理学以外の分野についても、一定の知識が要求されるが、講義では、地理学的知識はもちろん、他の分野についても、大いに「脱線」しながら、受講者諸君に浅く広く雑学的知識を伝え、以降の議論への理解が一層深まるように考慮したい。次いで、両大戦間期の映画に描かれた未来都市のイメージを論じた第六章、英国における1981年都市暴動の報道を地域イメージの視点から分析した第九章、地域紙の犯罪報道によって形成される都市像を取り上げて考察した第十章を、順次講読していく。これらの各章における議論を通じて、二十世紀の英国における都市の住環境の諸問題について理解を深める。また、必要に応じて地誌的な背景説明も盛り込む。
教科書
バージェス&ゴールド編『メディア空間文化論』古今書院
[1996年度の採点結果(1996年度は2時限分開講):A=59人、B=15人、C=36人、D=37人、E=97人]
授業概要
全くの初学者であることを前提に、パソコンの基本的な使い方と、日本語ワープロソフト「一太郎」の操作を学ぶ。ただし、実習課題には、地理学調査や論文作成の際に必要となる文書を取り上げ、地理学的研究の基礎を成す情報処理がどのようなものかを経験させる。
授業計画
情報処理機器の基本的性格と、実習に用いる機材について解説した上で、キーボードに慣れるために「一太郎」の操作を学ぶ。課題としては、通信文(調査依頼など)、簡単な図表の入ったレポート、文献表、などの作成が課される。
毎回、一定の課題に沿って、新しい操作を指示していく。場合によっては、当該時間内の成果を提出してもらうこともあるし、宿題という形にすることもある。総じて課題には、相当の時間を割く覚悟が必要となる。
なお、既に、一定の水準で「一太郎」を操作できる者には、別途課題を与える。いずれにせよ、授業の進度や水準は受講者を見て考える。
授業概要
初学者であることを前提に、簡単なデータベース機能の付いた表計算ソフト「ロータス123」の操作を学ぶ。ただし、実習課題には、地理行列型のデータを取り上げるので、地理情報の処理に特有の問題について、重点的に説明していく。
授業計画
表計算ソフトの基本的な機能について概説した上で、「ロータス123」の操作を学ぶ。課題としては、簡単な地理行列型データの作成、加工、作表、図化などを、国勢調査、人口・世帯数表、新聞の発行部数といった例に即して、取り上げていく。
授業の進め方などは、地理情報処理I(山田晴通)に準じる。従って、課題には、相当の時間を割く覚悟が必要となる。
なお、既に、一定の水準で「ロータス123」を操作できる者には、別途課題を与える。いずれにせよ、授業の進度や水準は受講者を見て考える。
授業内容
20世紀は、18世紀から19世紀に及ぶ「産業革命」の時代の延長線上にありながらも、「産業革命」とは異なる大きな変化を経験した時代であった。後世の歴史家が20世紀について語るときには、核兵器、社会主義国家、地球環境といった言葉とともに、コミュニケーション、情報、大衆社会などをキーワードとして選び出すことになるだろう。
この講義では、おもに20世紀において展開されてきたコミュニケーションをめぐる諸家の議論を、同時代の技術史的背景を踏まえた上で、概説する。具体的には、シカゴ学派社会学(パークの新聞論)、フランクフルト学派(ベンヤミンの複製芸術論)、情報社会論(マフルップ、ベルなど)、等々のコミュニケーション論を紹介する。その際に、それぞれの時期におけるメディア、通信技術、情報処理技術の発展過程に関しても確認しながら論を進めることによって、コミュニケーションをめぐる諸現象の実態的変化と、論理の展開とが相互に関連をもってきたことを示していく。ただし、講義の目的は、今日のコミュニケーション研究において基礎的なトゥールとなっている諸概念を理解することにあり、学史を知ることは二次的な課題でしかないので、網羅的なコミュニケーション史を講じるわけではない。また、講義では、適宜「脱線」も織り込んで、関連分野についての雑学的知識も身につくように配慮する。
講義スケジュール
半期の講義を通して、授業二〜三回程度を一つの区切りとして、次のようなテーマを順次取り上げながら授業を進めていきたい。
教科書
必要に応じてプリント教材を用意する。分野ごとの参考文献などは、講義の中で指示する。
評価方法
講義二〜三回に一度の割合で、小テストを行うか、簡単なレポートを提出してもらう。最終的な評価は、すべての小テストおよびレポートへの評価点の合計を基に、出席状況を加味して下す。
今年度の講義は終了しました。
[1997年度の採点結果:A=62人、B=55人、C=11人、X=20人、Z=6人]
演習表題
地域コミュニケーション調査
演習内容
地域コミュニケーションに関する調査を、参加者全員で企画・計画・実施し、報告書を作成する。この共同研究は、調査自体が成果を上げることもさることながら、参加した学生が調査の経験を通して研究の手法を身につけることを主な課題とするものである。共同研究には、対象地域での合宿を伴う現地調査などが組み込まれる。共同研究と並行して、4年次における「卒業制作・卒業論文」に向けた指導も行う。学生は、各自の関心のあるテーマについて予備的な文献調査を行って、その成果を報告するとともに、「卒業制作・卒業論文」に取り組む具体的な研究計画を練り上げる。
演習の性格上、時間割の外での拘束もあるし、ゼミの運営は強いコミットメントを要求する。参加者は、「カネ」、「ヒマ」、「根性」のうち少なくとも二つは充分に備えていること。(なお、事前に山田晴通研究室のホームページを見ておくこと。)
教科書
・未定(専門書を使う可能性がある)
参考文献
・随時指示する。
関連授業科目
・地域のコミュニケーション ・データ・アクセス法
その他
・希望者多数の場合は、個人面接により資質、意欲、適性などを総合的に判断して選考する。
・編入学生等、「コミュニケーション演習I」未履修者や、
他の教員の担当した「コミュニケーション演習I」の履修者の参加も歓迎する。
演習表題
ゼミナールの「掟」を学ぶ
演習内容
ゼミナール=演習という形式は、大学教育においては重要な位置を占めるものであるが、高校までの教育にはほとんど取り入れられていない。フレッシュマン・ゼミでは、まずゼミという形式に慣れ、自発的に学び、考える姿勢を身につけることが第一の課題となる。具体的には、共通の課題図書を選んで輪読し、その内容について報告し、討論する経験を通じて、
・報告要旨の作り方
・プレゼンテーションのコツ
・協調的で創造的な議論の作法 など
ゼミを運営していく上で必要な事柄が身につくように指導する。
課題図書は、できるだけコミュニケーション論以外の分野(ただし何らかの意味での隣接分野)から、専門性があまり高くない新書程度のレベルのものを選び、半年かけて読破する。隣接分野について浅く広く知識を得ることは、このゼミの第二の課題である。課題図書の最終的な決定は、ゼミ参加者と相談した上で行うが、次に「教科書・参考文献」として挙げるものの中から選ぶ予定である。2冊以上読む場合の2冊目以降は、参加者の希望を活かしていきたい。
参考文献
課題図書の候補
橋爪大三郎『はじめての構造主義』講談社現代新書
西尾幹二『「労働鎖国」のすすめ』PHP文庫
上野千鶴子『スカートの下の劇場』河出文庫
(補足)1995、1996年度は、結局、上野千鶴子『スカートの下の劇場』1冊を読んだ。
1997年度は、橋爪大三郎『はじめての構造主義』を読んでいる。
[1996年度の採点結果:A=7人、B=5人]
今年度の講義は終了しました。
[1997年度の採点結果:A=9人、B=6人、C=1人]
授業表題
文献情報を中心とした情報検索の方法
授業内容
オン・ライン/オフ・ライン、あるいは、エレクトロニック/ノン・エレクトロニックの違いを問わず、一般的にデータを収集をする上で表面化する諸問題を論じた上で、文献情報データベースへのアクセスを中心に、具体的な実習を行う。具体的には、大学図書館の館内システムや、多数の図書館を結ぶネットワーク(学術情報センターのシステムなど)について、その仕組みを理解し、実際の利用方法を実習するとともに、CD−ROMの形態で利用できる文献の総目録としてのデータベース(J−BISCなど)や、特定分野に関する専門的な文献データベース(例えば、音楽分野におけるRILMなど)、新聞の見出しデータベース(CD−ASAXなど)についても講義と実習を通じて理解を深める。
一応、以上のような内容を予定しているが、利用可能な教材の整備状況によっては、内容を変更することもあり得る。
授業計画
半期の講義を通して、授業二〜四回程度を一つの区切りとして、次の四つのテーマを順次取り上げながら授業を進めていきたい。
・文献情報の基本的問題
・図書館内の文献情報
・データベースの諸形態
・ネットワークの利用
なお、講義の必要から、通常の教室以外の場所(学内)で授業をすることもあるので、常に注意しておくこと。
(補足)インターネット環境の整備が進んだことを踏まえ、インターネットを利用した情報検索について比重を置いた講義にしていく予定である。
受講予定者へのおしらせがあります。
講義表題
「地域」と「コミュニケーション」の諸問題
講義内容
コミュニケーションをめぐる議論は、社会総体を対象とする普遍的なマス・コミュニケーションの問題として、個人レベルのパーソナル・コミュニケーションの問題として論じられる場合が非常に多い。言い換えれば、中間的な、「地域」のスケールで論じられるべき問題は、見落とされがちなのである。コミュニケーションをめぐる諸問題のうち、マス・メディアに見られる地域間の差異、地域メディア、コミュケーション形態にみられる地域性、あるいは、マス・メディアの流す地域イメージなどは、そのような問題の例である。こうした地域のコミュニケーションをめぐる諸問題について概説するとともに、「地域」スケールの問題意識が、マス・コミュニケーションやパーソナル・コミュニケーションに対して提起していく課題についても論じる。
参考文献
随時指示する。ただし、意欲のある者には、次の二冊が役立つだろう。
・竹内・田村・編『新版地域メディア』日本評論社
・大石 裕『地域情報化』世界思想社
講義計画
一年の講義を通して、授業二〜四回程度を一つの区切りとして、次の八つのテーマを順次取り上げていく。ただし、取り上げる順序などは、多少変更が生じるかもしれない。
・「地域」と「コミュニケーション」の結びつき方
・「地域メディア」の位置づけ
・日刊地域紙
・CATV
・その他の「地域メディア」
・「地域情報化」政策
・地域社会の変化とコミュニケーション
・「地域イメージ」の諸問題
評価
年間数回のレポートに、出席状況を加味して評価を行う。
[1996年度の採点結果:A=13人、B=6人、C=3人、Z=7人]
演習表題
地域メディア論
演習内容
地域社会において、コミュニケーションの担い手として一定の役割を果たしているのが、「地域メディア」と総称される諸媒体である。具体的には、地域紙、タウン誌、CATV、ミニFMなど、様々なものが「地域メディア」の例であるが、中でも日刊地域紙と、自主放送チャンネルをもつCATVは、とりわけ重要なメディアである。
この演習では、日刊地域紙と自主放送CATVの両方が存在する地域を選び、文献購読や現地調査を通じて、「地域メディア」が地域の中でどのように支えられているのか、といった問題について考えていく。
演習の性格上、時間割の外での拘束もあるし、ゼミの運営は強いコミットメントを要求する形で進めていく。参加者は、「カネ」、「ヒマ」、「根性」のうち少なくとも二つは充分に備えていること。
(補足)現在は、
・竹内・田村・編『新版 地域メディア』日本評論社
の輪読を進めている。また、夏の合宿は、長野県松本市周辺の諸媒体を見学する予定。
[1996年度の採点結果:A=3人、B=1人]
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