研究の道具箱:山田晴通
「非常勤講師」の多様性について
大学の授業は、専任教員だけでなく、様々な立場の方が、様々な関わり方で「非常勤講師」(あるいは「兼任講師」とか、単に「講師」と呼ばれる場合もある)として担当しています。ここでは、そうした「非常勤講師」の多様性について理解していただけるように、いくつかの類型への分類を示し、簡単な解説コメントをつけました。
私自身は「専業非常勤」の経験が無いので、あるいは誤解のある部分、言葉が足りない部分もあるかもしれません。お気づきの点がありましたら、ご指摘をいただけるとありがたいと思います。
- 他に主たる職業/収入があり、その職業が教員としての資格の裏付けとなる者
=「専業非常勤講師」と見なされることはない
- 他の大学等の教員
日本の非常勤講師制度は、本来はこうした立場の授業担当者を前提に作られており、非常勤給が低く抑えられる根本的な原因となっている。(一説では、「カルチェ・ラタン」と称された神田/お茶の水周辺の大学の集積は、本郷の東京大学と、霞ヶ関の官庁街から非常勤講師を得られやすいという立地条件から成立したともいわれている。)
- 大学以外の教育・研究機関等の教員・研究員
教職関連科目を初中等教育関係の「現場」の教員が担当することはよくある。また、高等学校等の教員の中にも大学レベルの研究者を目指す者はおり、将来が有望視される者には、大学での教歴をつける機会が与えられることがよくある。
- 専門職等の実務家、芸術家等
医師、弁護士、公認会計士、税理士等の公的資格を持つ者、官庁や企業に所属する実務家、科目の内容に関連する分野の学芸に優れた実績を残している者などは、それぞれの専門性を反映した、特に実務的な、あるいは実技的な科目を担当することがよくある。(医師、弁護士などには、同様の背景から「専任教員」となり、なおかつ大学からの所得よりも本業の所得の方が多い者もいる。)
- 他に主たる職業/収入があるが、その職業が教員としての資格の裏付けとみなされない者
=「専業非常勤講師」に準じると見なされる場合もある
- 予備校等、受験産業に従事する者
予備校等の教員の中にも大学レベルの研究者を目指す者はおり、将来が有望視される者には、大学での教歴をつける機会が与えられることがある。しかし、予備校等の専任教員を公然と非常勤講師として採用することには、大学の内外に抵抗感が存在することが多い。このため、受験産業を主な収入源としながらも、予備校等の専任となることには慎重な者も多いし、大学関係の文書では個々の非常勤講師と予備校等との関わりについては言及されないのが普通である。
- 教授する内容と無関係な職業に就いている者
研究・教育とは全く無関係な職業で一定の収入を得ながら、研究者としての実績も積み、本業に支障のない範囲で大学でも授業を担当する者。事例は少ないが、その中には受け継ぐべき家業があった者が目立つ。
- 他に主たる職業/収入のない者=広義の「専業非常勤講師」
- もっぱら非常勤講師給で生活する者=狭義の「専業非常勤講師」
非常勤講師給だけで生活する必要がある場合、週に十数コマの授業を担当するのは普通である。一つの大学(学部)で引き受けられるコマ数には制限があるのが普通なので、毎日いくつもの大学のいくつものキャンパスを移動し続ける生活を余儀なくされる。また、大学からの研究費の支給はないのが普通であるし、公的な競争的研究費の獲得も不利な立場に置かれる。
- 被扶養者(特に配偶者に扶養される者)
女性研究者で、専任職のないまま結婚後した後も研究を続ける者は多い。このような場合、主として配偶者の収入によって生計を立てつつ、収入よりも、大学とのつながりを維持することを求めて、非常勤講師を続ける例が多い。特に、語学科目や文学関係分野で、こうした例が目立つ。週に2コマ程度までなら税法上は専業主婦と見なされて優遇を受けられるが、より積極的に仕事を引き受ける者もいる。
- 年金受給者等
既に年金受給者となった元大学専任教員が、非常勤講師として教鞭をとるケースは非常に多い。国公立大学では60代で定年を迎えることが多いが、私立大学の多くは70歳が定年であるし、非常勤講師についてはさらに定年が先であったり、そもそも事実上定年がない例もある。また、元高校教員で、校長職などを経験した者や、実務経験者でしかるべき研究実績もある者などが教鞭をとるケースも少なくない。
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