ウォークマン



高校生の頃、通学に自転車を使っていた私の必需品はウォークマンだった。
時には、授業中にも活躍していたりした。
そのウォークマンはソニー製のもので、初めてのバイト代で購入したものだ。
自転車に乗りながら音楽を聴くのは危険だと思っていたが
毎日の往復20分程度の道のりを楽しいものにしてくれた。
高校3年生の時には、懸賞でソニー製のスケルトンのウォークマンを当てた。
こちらは電池式でかさばるしリモコンもついてないから、すぐに使わなくなった。
大学に入学する前、私は自動車の免許を取った。
それで原付に乗り出してから、私は自転車にあまり乗らなくなった。
ウォークマンは使われなくなり、部屋のどこかに置いてあった。
そして大学に入学してからもそれは続いた。
電車に長時間乗ったりすることも滅多になかったし
たまに新幹線に乗ったり飛行機に乗ることがあるときに使った程度だ。

しかし最近、私は再び耳にイヤホンを装着し始めた。
大学内でちょっとした移動をしたりするときでさえ。
使っているのは懸賞で当てたスケルトンのものだ。
最初に買ったものは壊れてしまったからだ。
スケルトンの方もオートリバース機能が壊れたから
A面が終わってもB面に行かない。だから手で入れ替えている。
かなり恥ずかしい作業やけど、壊れたからねえ。

どうして急に私は耳を塞ぎ始めたのだろうか。
時々訳もなく煩わしさを感じるからなのか、
誰かにどこかで話しかけられたくないからなのか。
ただ好きな音楽を聴いていたいだけなのかもしれないが、
ウォークマンの類はプライバシー権をあからさまに、
そしてさり気なく主張したアイテムであるのではないだろうか。


「無意識」に感じる音を一部排除して
放っておいてもらえる環境を作るモノ。
それでいて気分が良くなるモノ。
「Leave me alone.」とはっきり言えない社会に、非常にフィットしたモノ。
「Leave me alone.」とはっきり言えない私に、非常にフィットしたモノ。

2000.2.18 0:35 AM

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