私的ページ:山田晴通
「ウチはまだマシ」でよいのか?
掲出に際して、職員の方のお名前は伏せることにしました。
東経大教職組機関紙「輪」第196号 原稿(2009)
「ウチはまだマシ」でよいのか?
山田晴通
酪農学園大学を会場とした今年の日本私大教連の全国教研集会には、東経大から職員5名、教員1名が参加した。参加組合の中では、われわれの単組が最も参加者数が多かった。
全国教研には、これまで何度も参加してきたが、今年の集会は、従来にもまして盛会という印象であった。その背景には、近年いよいよ顕在化してきた私立大学をとりまく経営環境の悪化と、労使関係において乱暴な姿勢をとる理事者に対する組合の取り組みの高揚があ
る。加えて、いよいよ近日中に重要な総選挙が行われるというタイミングがあり、報告や講演の中でも、厳しさを増しつつも、むしろそれ故に組合として取り組むべき課題が顕在化してきた情勢が、様々な形で感じられた。
今回は、初日の全体集会と、二日目の分科会「投機的資産運用とガバナンス」、三日目の分科会「不当解雇・権利侵害とのたたかい」に参加した。このうち「投機的資産運用とガバナンス」の分科会では、単組を代表して資産運用問題の経緯を報告したが、いろいろ至らぬところもあり、その都度、●●さんにフォローしていただいた。同じセッションで報告された他大学の事例では、東経大を遥かに上回る巨額の評価損が出ていたり、資産運用を含め、より広い範囲で理事者側の執行体制に問題があったりと、聞いていて思わず「ウチはまだマシな方だ」と、東経大の現状の深刻さを見誤りそうになるほどだった。
最終日の「不当解雇・権利侵害とのたたかい」の分科会では、例年のことながら信じられないくらい厳しい権利侵害、露骨な組合攻撃の実態がいくつも報告された。権利侵害への対抗手段は、団体交渉から、労働委員会や裁判所の判断を仰ぐところまで、様々なものがある。しかし、たとえ裁判闘争を通して、法的にはしかるべく勝利したとしても、職場復帰の断念に追い込まれたり、職場復帰しても新たな差別的待遇に晒される、といった厳しい事例の報告も複数あり、話を聞いているだけで深刻さに身震いのする思いがした。
これまた、うっかりすると「ウチはまだマシ」と安心しまうような内容の報告が多かったわけだが、もちろんこれも、とんでもない思い違いである。全国でも最も酷いと思われる事例が紹介されている場なのだから、東経大の状況が、それと同じ土俵に乗せて比較できてしまうということ自体が、本来は極めて危ういのである。
「ウチはまだマシ」と思う時には、同時に「もう少しで危ない」、「明日は我が身」とも感じられる想像力が必要だろう。また、一歩踏み込んで、同じ仕事を他の職場でしている人たちの待遇改善のために、自分たちが率先して汗をかかなければいけないという認識もしっかりと持つべきだろう。働く者の連帯は、そういうところから始まるのだと思う。
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