私的ページ:山田晴通

富士フェニックス短大の「募集停止」

 2001年3月に、富士フェニックス短期大学日本語日本文学科は、学生がすべて卒業し、同学科所属の教員は解雇されました。また、独自の募集がなくなって在籍者が激減した英語英米文学科においても、ほとんどの教員が解雇されました。これにともなって労働組合もなくなってしまったようです。
 2002年4月現在、すでに組合のページはなくなっています。また、短大のページも中味はほとんどありません。

 富士フェニックス短大関連の最近の情報をご存じの方は、お知らせいただけるとありがたく存じます。
yamada@tku.ac.jp
[2002.04.01.]

 静岡県御殿場市の富士フェニックス短期大学は、1999年秋に理事者側が学生の「募集停止」を打ち出し、来期以降に新たな「大学」に移行させるという方針を示しました。一連の動きは新聞報道などにも取り上げられていますが、この間の経緯には外部からはわかりにくい点が多くあります。このまま事態が進んでいきますと、現職の教職員の(少なくとも一部は)やがて予想される短期大学の学科廃止とともに解雇されるおそれがあります。
 ここでは、こうした事態を受けて、富士フェニックス短期大学教職員組合が発表した声明文を、同組合のご厚意により掲出します。この件に関する大学側の見解を示した資料をお持ちの方は、山田までお知らせ下さい。できれば両サイドの意見を並列する形で情報を広めたいと思います。
yamada@tku.ac.jp

この件に関心をもたれた方は、声明文末尾の連絡先へお問い合わせ下さい。


さらに、その後の展開
 2000年4月になって理事会側は、この件で情報を発信している組合のウェブページを閉鎖するよう圧力をかけています。
 ことは、インターネット上での表現の自由という問題にも関わってきました。

その後の展開
 2000年3月1日の団交で、理事会側は、月末までに大幅な整理解雇を実施するという乱暴きわまりない通告を組合に突きつけました。具体的な展開は、「組合ニュース」の第12号にあります。また並行して、組合敵視をむき出しにした理事会側の不誠実な対応が続いています。
 事態の展開は急なことが予想されます。

 この解雇の予告は地方労働委員会の斡旋で棚上げになりました。
富士フェニックス短期大学教職員組合:組合ニュースへゆく

富士フェニックス短期大学の学生募集停止に反対する
声    明    文

東海地区私立大学教職員組合連合
富士フェニックス短期大学教職員組合

平成11年10月12日

学生募集停止の経過
 学校法人加藤学園は9月14日(火)、評議員会および理事会において富士フェニックス短期大学の学生募集の停止を突然に決定し、同日午後4時より臨時教授会において富士フェニックス短期大学教職員に報告しました。理事長兼学長から、本年度学生募集(平成12年度入学生の募集)の見通しが厳しく、「KLC(加藤Lynnカレッジ)につながる英語英米文学科国際観光コースを除いて富士フェニックス短期大学の学生募集および入学試験を停止し、KLC(加藤Lynnカレッジ)の学生を富士フェニックス短期大学の学生とする」という説明がなされました。これは、富士フェニックス短期大学としては学生募集を行わず、入学試験も行わず、KLC(加藤Lynnカレッジ)に入学した学生のみに富士フェニックス短期大学の学籍を与えるというものです。そして富士フェニックス短期大学の平成12年度入学生の募集活動はすべて停止し、願書受付および入学試験もすべて中止されています。また、9月21日付で各高等学校長および進路科(課)長に、「開学予定の加藤リンカレッジにつながる英語英米文学科の国際観光コースを除いて平成12年度以降当分の間、募集を停止する」旨の文書を郵送しました。従って、今現在富士フェニックス短期大学の平成12年度入学生を募集する本年度の入試・募集業務はすべて停止しています。
 これに対し、富士フェニックス短期大学の教職員16名の署名をもって9月14日に、同じく15名の署名をもって9月24日に、募集活動の再開を希望する文書を各理事に郵送しました。
 一方、富士フェニックス短期大学教授会において募集停止についての審議はこの間全く行われませんでしたが、学長が欠席し日本語日本文学科長に議事進行が委任された10月5日の定例教授会において、緊急動議として募集停止についての議題が提出され、初めて審議が行われました。その結果、賛成1・保留1・反対12の圧倒的多数で募集停止反対を決議し、また理事会に対しての「募集再開のお願い」を提示することを賛成12・保留1・反対1で可決しました。これは、募集活動を行うべきであるとする教員の大多数の意志の表れです。

学生充足状況・将来計画
 理事長兼学長の説明によれば、富士フェニックス短期大学は毎年約1億円の赤字を生じ続け、現在まで累計10億円の赤字に達しているということです。しかし、富士フェニックス短期大学は開学以来現在にいたるまでの累積で、平均してほぼ定員を充足しています。ことに日本語日本文学科は、平成11年度に定員を割りましたが、それでも累計で入学者数は定員を89名上回っています。このような状況で10億円の赤字が生まれるというのは理解しがたいことです。ちなみに教職員に対しても、富士フェニックス短期大学教職員組合に対しても財務資料は一切示されていません。また、10月5日の定例教授会における評議員の発言によれば、募集停止を決定した評議員会でも財務の詳細な資料は検討されなかったということです。
 ただし、現在の少子化の中で学校運営は容易でありません。その対策として通常は改組転換や短期大学の4年制大学化が模索されます。しかるに経営側からはそのような将来計画の具体案は提示されず、学校の将来についての教員からの提言もほとんど無視されました。学校の発展のための努力がないまま、経営陣は学校廃止につながる募集停止を突然に決めてしまったのです。

文部省への報告
 短期大学の募集停止については、その決定を行ったときに文部省に報告することになっていますが、その報告は加藤学園の法人本部からすぐに行われませんでした。そして、10月5日定例教授会の席上で、ある評議員は「文部省への報告が行われたがどうかは知らない」旨を発言しました。また同日の富士フェニックス短期大学教職員組合との団体交渉において、川柳評議員は「文部省と接触を始めている」とは述べましたが、報告自体についてはいまだ行われていないことを前提にした発言をくり返しました。一方、富士フェニックス短期大学教員が数回にわたり文部省に確認したところ、加藤学園より文部省への報告は10月8日現在に至っても行われていません。
 また、文部省への報告には募集停止決定について、理事会の議決の議事録と教授会の議決の議事録の両者を添付することになっています。ところが、上にも述べたように教授会では募集停止に反対の議決を行っています。従って書類上の不備によって、文部省への募集停止の報告は行うことができません。
 さらに、文部省は学科単位でなければ募集停止を認めません。つまり「英語英米文学科の国際観光コースを除いて」募集停止するようなことはできないはずです。この点に関しては理事会側は10月5日の団体交渉の席で、「日本語日本文学科募集停止・英語英米文学科募集継続」として報告すると述べました。この報告の通りだとすれば少なくとも英語英米文学科では募集は行われ、入学試験も予定通り行われるはずです。しかし、実際には日本語日本文学科・英語英米文学科ともに募集活動は停止されており、英語英米文学科についても入学試験の出願を受け付けず、入学試験も行われないことになっています。また10月5日の定例教授会で、英語英米文学科受験の問い合わせに対して、窓口で断っていると事務局長が説明しました。もし上記のように「日本語日本文学科募集停止・英語英米文学科募集継続」と報告するのだとしたら、事実と異なった虚偽の報告を文部省に行うことになります。
 一方、加藤Lynnカレッジ入学者のみを富士フェニックス短期大学英語英米文学科入学者とするのですから、英語英米文学科の入学者は存続するようにも見えます。しかし、加藤Lynnカレッジ入学者のみに富士フェニックス短期大学学生の学籍を与え、加藤Lynnカレッジへの入学をしないものには富士フェニックス短期大学へ入学させない(従って加藤Lynnカレッジの募集は行うが、富士フェニックス短期大学の学生募集は行わない)ということが公に認められるのか、多大の疑問があります。
 ちなみに加藤Lynnカレッジはそのパンフレットで「日本で初めてアメリカの認可を受けた大学」と称し、日本の学校教育法上の大学ではない旨の説明を行っていません。しかしながら、実際には文部省の認可を得た学校教育法上の大学ではなく、日本の法律の上で位置づけを持たない私塾に過ぎない扱いを受けるのです。

御殿場市との関係
 富士フェニックス短期大学の校地は開学にあたって御殿場市より譲与されたものです。譲与に当たって「基本協定書」および「土地譲与契約書」が結ばれていますが、そのなかで、短期大学の募集を停止した場合には、それにかわる高等教育機関を設けるのでなければ、校地を譲与時の現状に回復したうえで返却することが規定されています。一方、加藤Lynnカレッジのパンフレットには現富士フェニックス短期大学校地・校舎を加藤Lynnカレッジ校地・校舎として掲載していますから、加藤学園の理事会は加藤Lynnカレッジが高等教育機関として認められることを既定の事実として扱っていることになります。ところが御殿場市は加藤Lynnカレッジを富士フェニックス短期大学に代わる高等教育機関として認めるかどうかの判断をいまだ行っていません。日本の法律上の位置づけを持たない私塾を御殿場市が富士フェニックス短期大学に代わる高等教育機関として認めるかどうか、また加藤Lynnカレッジの募集・入試を富士フェニックス短期大学の募集・入試として認めるのかどうかが今後の焦点の一つとなります。
 なお、10月5日の団体交渉の席上での理事会側の説明によれば、加藤Lynnカレッジは学校法人加藤学園が設立者ではなく、加藤学園とLynn Universityによって設立された別法人です。よって、学校法人加藤学園を契約当事者とする「基本協定書」および「土地譲与契約書」の解釈に問題が生じます。

私たちは募集停止に反対する
学校教育法第13条によれば、6ヶ月以上授業を行っていない大学は、文部省が閉鎖させることができます。そして学校閉鎖は学校の廃止に結びつきます。つまり、学生募集停止は結果的に学校廃止に直結するのです。従って東海地区私立大学教職員組合連合および富士フェニックス短期大学教職員組合は以下の理由で募集停止に反対します。
【1】募集停止は受験生に多大の影響を与えます。富士フェニックス短期大学の教職員は6月・7月に各高等学校を回り、富士フェニックス短期大学への入学を熱心に勧めました。本年度募集活動は既に行われていたのです。この活動が理事会の決定によって9月中旬に入って突然に中断されたのです。9月以前の富士フェニックス短期大学の募集活動に応じて、本学への入学を希望し、あるいは受験を予定する受験生は少なからず存在しましたが、彼らは受験シーズン間近になって志望の変更を強いられることになっています。また、受験生を指導する各高校教員の方々にも多大の迷惑をかけています。
【2】募集停止は在学生に多大の影響を与えます。自分たちの卒業後に母校がなくなると聞き、来年には新入生が入学してこないと聞いた在学生は動揺しています。教育機関として、学生に不安を与えるようなことは許されることではありません。
【3】募集停止は卒業生に多大の影響を与えます。このままで募集停止が既成事実となれば、やがて卒業生は母校を失います。これは心理的にも多大の悲嘆を与えることです。彼らの拠り所を奪うことは許されることではありません。
【4】募集停止は周辺自治体の市民・町民の方々に影響を与えます。富士フェニックス短期大学は開学に当たって御殿場市・裾野市・小山町・長泉町・清水町の2市3町より10数億円という多大の援助を受け、公私協力方式の教育機関として発足しました。これは市民・町民の方々の期待の表れでありましょう。学校廃止はその期待を裏切る行為です。
【5】募集停止は学校法人加藤学園の教職員・児童・生徒にも影響を与えます。現在進行中の募集活動を突然停止し、各方面に多大の迷惑を与えることは、加藤学園全体の評価に傷を付けます。ことに、その決定理由に上記のような多くの問題があるのですから、学園全体の信頼性を大きく損なうことになります。だから、富士フェニックス短期大学の募集停止の決定は単に短期大学の問題ではなく、公益に寄与すべき公的存在としての学園全体に多大の影響を与える行為なのです。以上のほか、募集停止・学校廃止は多方面に影響を与えます。
 このような募集停止を私たちは許せません。東海地区私立大学教職員組合連合および富士フェニックス短期大学教職員組合はこのような募集停止に強く反対するとともに、富士フェニックス短期大学の改組転換をはかり、文部省認可の4年制大学へと発展させることを主張します。


東海地区私立大学教職員組合連合
〒456-0006 名古屋市熱田区沢下町9-3-401 電話052-883-6969
富士フェニックス短期大学教職員組合
〒412-0001 御殿場市水土野81-1


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