資料:私立大学教員倫理綱領(社団法人日本私立大学連盟)


  私立大学教員倫理綱領  

―私立大学教員の義務と責任―


2003(平成15)年3月


社団法人日本私立大学連盟


 本綱領作成にあたっての認識と期待 

 日本の高等教育において、私立大学が担っている役割の重要性は改めて言明するまでもない。特に、大学への進学率は50%に迫り、その約80%の学生たちの育成を私立大学が担っている。この私立大学が果たしている役割の重要性に対応して、私立大学の経営と教育研究の公的責任はますます重くなりつつある。
 私立大学教員は、この責任を自覚し、21世紀を担う人間の養成と教育研究を通じて社会全体の文化、教養、学問水準を高めるという、極めて公共性の高い使命を果たすことが期待され、それに相応しい職業倫理が求められている。さらに現代においては、大学の持つ価値と有効性について公正かつ客観的に評価する機運が強くなってきた。大学の営みについての説明責任は、私立大学教員がその実質を担う責任がある。
 よって、私立大学教員は、大学の主要任務を担う者として、社会の期待に応え、大学の存在意義を説明し、その発展に寄与する責務があると考える。
 日本私立大学連盟は、上記の認識に立ち、自らの意志で自らを律するために、ここに「私立大学教員倫理綱領」を提示し、私立大学教員の職業倫理を鮮明にすることに努めた。
 加盟大学においては、この綱領を参照して、それぞれの大学にふさわしい「教員綱領」を作成されることが期待されているところである。

     I. 総論     


 教育と研究という崇高な任務に携わる大学教員の職業倫理の基盤は、基本的人権の尊重と知的誠実性を貫徹することにあろう。
 特に、私立大学の教員においては、自律的意志をもってこの基盤に立ち、私立大学が存在する意味を明らかにすることに努めるとともに、所属する大学の建学の理念と教育方針に基づき、学生の学習支援を第一の責務とすることを明確に認識する必要がある。そのことは、私立大学の財政的資源の主要部分が学生納付金であることに対する説明責任の基礎である。
 以上の基本的認識に基づいて、私立大学教員の倫理を以下に示す。


     II. 各論     


 私立大学教員の倫理を、各論として5つの対象分野に分けて、以下に述べる。

 1. 所属大学に対する倫理 

 私立大学の教員は、所属大学の理念を尊重し、その目的の達成に貢献する。

(1) 学内諸規則を誠実に遵守する。
(2) 所属大学の本務に専念し、出校して教育研究に従事する。出校する日数は、所属大学との契約に拠る。
(3) 兼業または兼職に当たっては、所属大学の許可を受ける。許可を受けた場合であっても、これによって本務に支障を生じさせない。
(4) 所属大学の共同の営みに積極的に参加する。
(5) 所属大学における勤務について、定期的に業績評価を受ける。
(6) 大学の公的資源を私的利益のために用いない。
(7) 管理職の任(務)に就くときは、関係教職員の倫理意識の向上を自らの重要な責務とする。

 2. 学生に対する倫理 

 私立大学の教員は、学生の信頼に応え、知的営みの先達として、学生の学習する権利を擁護するとともに、所属大学が定めるカリキュラムに従った教育活動をする。

(1) 私立大学の教員は、公私の区別を明確にし、教育者として学生の模範となる品位ある行動をとる。
(2) 授業および研究指導において、学生の人格を重んじ、教育者として学生の自由な学習を支援する。
(3) 自己の教育能力を開発し、授業の内容および方法を改善することについて、不断の努力を怠らない。
(4) 自己の教育活動に対する学生の評価・批判に真摯に応答する。
(5) 成績評価、単位認定その他学生指導全般において公正を確保する。
(6) 権威的な姿勢で学生と接しない。学生に対してその地位を利用した人権侵害を行わない。
(7) 担当主題と無関係な問題を教室に持ち込まない。

 3. 同僚に対する倫理 

 私立大学の教員は、同僚教員の学問的立場を尊重するとともに、学問的批判に対しては誠実に応答する。同僚職員の固有の職務を理解し、協力して所属大学の向上に努める。

(1) 同僚による評価を受け、また同僚に対する評価を公正な視点で誠実に行う。
(2) 同僚教職員に敬意をもって接し、その人権を侵害しない。

 4. 研究者としての倫理 

 私立大学の教員は、大学教員に保障されている「学問の自由」が、責任を伴うものであることを自覚し、知識の探求を通じて社会に貢献する。

(1) 知識探求の意志を持ち、学術研究に精励し、研究成果を公表する。
(2) 自己の専門分野の進展について、常に関心を持ち、その成果を教育に反映させる。
(3) 私的利益を目的として研究を行わない。報酬を伴う研究その他の活動は、大学の了解に基づいて行う。
(4) 他の研究者の学問的立場を尊重し、学問的批判に対しては誠実に対応する。
(5) 公的に用意された研究資金を不正に用いない。
(6) 所属大学との契約に基づいて受託研究・産学共同研究を行い、公益性に反する研究は行わない。

 5. 社会に対する倫理 

 私立大学の教員は、自己の専門分野の知識を生かし、公共の福祉と文化の向上に寄与する。

(1) 公職への奉仕を求められた場合には、可能なかぎり協力する。
(2) 公職に就くときは、その職務に伴う権限を特定の個人や組織の利益のために使わない。反社会的行為に加担しない。
(3) 入学試験の公正・適正な実施に協力する。

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