山田晴通:いろいろな活動記録



2011.08.07.

「東京経済大学における「教学改革」の動きにみる「学士力」論の陰」

  日本私大教連 第22回全国教研集会(高松サンポートホール:2011.08.05-07.)
  第4セッション「中教審「学士課程教育」は現場にどのような影響をもたらいているのか」分科会・報告
  (掲出に際し、一部レイアウトを変更)
第22回全国私大教研レポート                                  第4セッション

東京経済大学における「教学改革」の動きにみる「学士力」論の陰
東京経済大学教職員組合 山田晴通

1.2000年代における東京経済大学

  2000年 創立百周年記念事業:現代法学部開設(短期大学部を改組)
  2004年 「21世紀教養プログラム」を設置。
        *この頃から「仕組み債」問題が表面化
	    *共済手当問題(2003年:2004年 - 2008年に削減)
  2007年 「TKUチャレンジシステム」開始(ベーシックプログラムが文部科学省「学生支援GP」):
      「東経大プロフェショナル宣言」
        *学長選挙のやり直し
  2010年	早期卒業制度導入:国分寺キャンパス再開発開始(1期工事は2013年完成予定)
      「TKUエンプロイアビリティ養成プログラム」(文部科学省「大学生の就業力育成支援事業GP」)
      「TOKYO TOP30計画」を宣言。
        *学長選挙規程改定の否決

  富塚文太郎(b.1929):学長(1992年 – 2000年)、理事長(1998年 – 2005年)
  村上勝彦(b.1942):学長(2000年 – 2008年)、理事長(2008年 – 2011年)
  久木田重和(b.1943):学長(2008年 – 現職)

  水野 繁(b.1929):理事長(2005年 – 2008年)…(元)国税庁長官、JT社長など
  岩本 繁(b.1941):理事長(2011年 – 現職)…OB、公認会計士

2.外からの「学士力」議論

  2004年 経団連「21世紀を生き抜く次世代育成のための提言」
  2006年 経済産業省「社会人基礎力」
  2008年 中教審「学士課程教育の構築に向けて」(「学士力」素案の提示は2007年)
  2009年 私大連「私立大学における教育の質向上」(「私立大学の学士力」)

  アドミッションポリシー、カリキュラムポリシー、ディプロマポリシー…
  もともと課題と認識されていたテーマへの取り組みを学内に浸透させるために、「外圧」を利用した?


【知識】 	1) 異文化の理解▽
 		2) 社会情勢や自然・文化への理解 △
【技能】 	3) コミュニケーション能力 ★
		4) 数量的スキル ★
		5) 情報活用力 ★
		6) 論理的思考力 ★
		7) 問題解決力 □
【態度】 	8) 自己管理力 □
		9) チームワーク・リーダーシップ □
		10) 倫理観 □
		11) 市民としての社会的責任 □
		12) 生涯学習力 □
【創造的思考力】 13) 知識・技能・態度等を総合的に活用し,自らが立てた新たな課題を解決する能力 □ 
		3.一定の成果を上げている「改革」

		  TKUチャレンジシステム
		    TKUベーシックプログラム(全学生)
			…「TKUベーシック力」パンフレット、一部の導入教育ゼミで使用
			10の力  1) 進一層の力 □  2) TKU常識力 △  
			3) 日本語力 ?  4) 数的思考力 ★
			5) 英語基礎力 ▽  6) IT活用力 ★
			7)  TKUマナー力 □  8) キャリア形成力 □
			9) 調査・分析・論理的思考力 ★  10) 実践的コミュニケーション力 ★

*「学士力」と比べると、「態度」「創造的思考力」の位置づけが異なる。

    TKUアドバンストプログラム(選抜制)… 一部では、入試とも連動
	会計プロフェッショナルプログラム
	法プロフェッショナルプログラム
	金融キャリアプログラム 
	グローバルキャリアプログラム
	TKUベルリッツプログラム
	PRプロフェッショナルプログラム

  学習センターの開設(2007年).... 積極的な講座等の企画
                  利用が徐々に拡大している … 他大学から視察なども

  就職指導室→「キャリアセンター」への転換 … 多数のキャリアカウンセラーの導入
  CSC(キャリア・サポート・コース)の拡充… 資格取得実績と言う意味では一定の成果が上がっている

  授業回数の確保(現状では半期授業14回)…2005年度前後は12-13回:2009年度から現行体制
                      …震災対応で授業開始が遅れたため、2011年度前期は12回

4.「改革」がもたらす軋み

 この間、新たに導入された仕組みが、機能している部分もあるものの、他方では、学長、副学長など執行部
の意向を受けた「改革推進本部」(あるいは、震災を受けての「危機管理本部」)が独走し、教授会や各種委
員会が振り回されるといった局面も見られるようになっており、危惧が広がっている。

 11春闘における団交の中で、実質的な授業期間の拡大を踏まえ、授業の休講・補講・代講に関するルールの
見直しを求める組合に対して「教学担当副学長」は、これは自分の権限が及ぶことではなく教授会自治の問題
だ、と応答した。しかしながら、他方では、履修登録可能単位数の圧縮(キャップ制)については、教学担当
副学長が代表者となっている改革推進本部から、各学部長を通して各学部教授会、全学教務委員会での検討を
依頼している、という状況がある。

 人件費比率を重視する傾向が、安易な業務委託の導入などに繋がるおそれもある。教員、職員とも、正規教
職員数を大幅に増やせず、むしろ職員数の圧縮が模索されている中で、「改革」によって仕事が増え、部局が
増え、役職者が増え、非正規を含めてキャンパスで働く人は増えても、民主的な大学運営に責任と使命感をも
って参与する正規教職員の数が増えなければ大学はよくなっていかないはずである。


山田晴通:日本私大教連 全国私立大学教育研究集会 参加記録

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