研究の道具箱:山田晴通
日本の地域紙データ:用語解説
このサイトでは、日常的に使われている諸々の新聞分類カテゴリーの用語を、以下のような意味の整理に基づいて使っています。これは、山田の論文等における用法に準じたものです。
///全国紙///地方紙///ブロック紙///県紙/県域紙///地域紙///
【概説】
特定の専門分野に特化した「専門紙」に対し、ひろく時事報道一般を扱う新聞は「一般紙」と呼ばれます。
通常の議論では、「一般紙」は日本語による新聞であり、民間企業が、営利事業として、不特定多数に有料で頒布するものであることが暗黙の前提となっています。このため、「英字紙」、「機関紙」、「無代(広告)紙」といった用語が、別に存在しています。
一般紙はまた、刊行形態によって、「日刊」(おおむね週に5日以上刊行するもの)、「隔日刊」、「週刊」、あるいは、「朝刊」、「夕刊」、「朝夕刊(セット)」などと分類されます。通常、「一般紙」の議論では、朝夕刊を問わず「日刊紙」であることが前提とされているのが普通ですし、有料であることも当然とされています。
しかし、活動範囲が限られている地域紙のような場合には、「非日刊紙」の中にも地域で一定の評価を得ているものが存在する場合もありますし、広告収入によって成り立つ「無代(広告)紙」が重要な役割を果たしている場合もあります。
また、一部の機関紙(政党機関紙である『赤旗』、宗教団体機関紙である『聖教新聞』など)は、内容的にも「一般紙」に準じているものがあります。
「専門紙」(「スポーツ紙」、「業界紙」等)や、「英字紙」、「機関紙」を除いた「一般紙」について、多くの場合「日刊紙」であることを暗黙の前提に、主に配布・販売されている地理的な範囲によって分類した場合に用いられるのが、以下のような用語である。
こうした業界秩序は、太平洋戦争中の新聞統制体制の枠組みが作り上げ、その基本的な構造が現在まで維持されてきたものである。
- 「全国紙」
戦時下の新聞統制体制の下で、全国への配布が認められた一般紙3紙(『朝日新聞』、『毎日新聞』、『読売新聞』)と(当時の)経済専門紙2紙(『日本経済新聞』、『産業経済新聞』=現在の『産経新聞』)。これら5紙は戦後も全国への配布体制をとり、現在も数百万部単位の発行部数をもっている。
- 「地方紙」
戦時統制下で、複数の府県への配布が認められたブロック紙と、特定の府県への配布が認められた県紙、および、戦後、これらに準じて県域以上の規模の範囲を活動対象として成立した諸々の新聞の総称。文脈によっては「地域紙」を含んでいることもある。
- 「ブロック紙」
戦時統制下で、複数の府県への配布が認められた広域を対象とした地方紙を「ブロック紙」と称したが、その後も、これに準じる規模の地方紙を「ブロック紙」と称する。
戦時統制下のブロック紙は、『東京新聞』、『中部日本新聞』=現在の『中日新聞』、『大阪新聞』、『西日本新聞』の4紙を指した。戦後、『中部日本新聞』〜『中日新聞』は、順調に事業を拡大し、配布地域も拡大したが、他の3紙は経営的に苦境に立たされた。『東京新聞』は、経営不振から新聞事業が譲渡され、1967年からは中部日本新聞社〜中日新聞社東京本社によって発行されている。『大阪新聞』は、戦後は大阪府内を主な対象とする都市型の新聞となり、ブロック紙ではなくなった(最終的には、2002年3月に休刊)。『西日本新聞』も、福岡県外への配布部数は佐賀県、長崎県である程度の部数が確保されているものの、ブロック紙としては小規模になった。
今日では、『中日新聞』、『西日本新聞』に、発行部数が百万部を越える『北海道新聞』を加えて「ブロック3紙」と呼ぶことが多い(『東京新聞』を加えて4紙とすることもある)。また、ある程度の部数を県外に配布している有力な「県紙」が自らを「ブロック紙」と称することもある(例えば、宮城県=東北の『河北新報』)。
- 「県紙/県域紙」
戦時統制下で、特定の府県への配布が認められた地方紙を「県紙」と称したが、その後も、これに準じる規模の地方紙を「県紙」と称していることが多い。しかし、ここでは戦時体制下の「県紙」のみを「県紙」とし、戦後になってから刊行(復刊を含む)されたものは「県域紙」として区別する。
いわゆる「一県一紙」政策によって成立した戦時統制下の県紙は、その多くが、統合によって経営基盤を固め、今日まで有力な地方紙として存続している。しかし、全国紙や有力ブロックの発行拠点に近い大都市圏では、県紙の弱体化が進んでおり、本来の県紙としての規模を失ったり(『奈良日日新聞』など)、廃刊に至った例が多い(『千葉新聞』、『滋賀日日新聞』など)。
「県域紙」には、「県紙」が存在する県で対抗紙として刊行されているもの(「第二県紙」などとも称される)と、「県紙」が失われた県でそれに代わるものとして刊行されているものとがある。前者の例としては『福島民友』、後者の例としては『千葉日報』などがあげられる。しかし、概して「県域紙」の経営は、「県紙」よりも苦しいのが普通である。
- 「地域紙」
市町村などを単位として、配布地域が限られた、県紙/県域紙の規模に至らない新聞は、戦時統制下ではごく一部の例外を除いて存続が認められなかったが、戦後になって多数が刊行されるようになった。こうした小規模紙は「ローカル紙」とか「地域紙」と呼ばれている。
日刊「地域紙」の中には、地元市町村で80%〜90%台の世帯普及率をもつ有力紙もあるが、一方ではほとんど個人事業の域を出ないものも少なくない。特に、非日刊紙には、零細な事業規模のものが多い。
なお、この<日本の地域紙データ>では通常の山田の論文等における用語の使い方とはやや異なり、日刊紙を中心としつつも、一部の非日刊紙や無代広告紙を含めて「地域紙」として扱っている。
最終更新:2004.01.10.
このページの記述に関して、お気づきの点は、東京経済大学山田研究室まで、おしらせください。
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