第1回 | 4/14 |
メディアをとりまく今日的状況を把握するための序章
■電子メディアの浸透とともに浮上してきた最重要の問題:ヴァーチャルな
もの(Virtuality)の増殖
●:『ターミネーター2』(FXとシュミレイションの融合)
●:CG(被写体のない映像の出現)
●:『スピーシーズ』(より徹底した例)
●:NHKスペッシャル『ムスタン王国』(1992)(「やらせ」の終焉)
■傍観の限界:
*「サーフィン」(相対主義)、「ラダイト」、「メディア・アクティヴィ
ズム」(act/activeであることの再定義)
●:Trust Me
*ヴィデオのラダイトLuddite (19世紀の機械破壊運動)? あるいはこ
の作品制作のプロセス自身のアクティヴィティに注目すべきか?
●:Liberate video
*「ヴィデオ・アクティヴィズム」
■電子テクノロジーの二つの機能:
・身体を消去する方向
・身体を再発見・活性化する方向
■強者にとってのテクノロジーのナンセンス:
ARPA(Advanced Reserch Project Agency)のABTP(戦地での医療)(Richard
Satavaが率いる)(ARPANET――インターネットの発端――のその後)
■「アウトロー」(outlaw――既存の枠外の者)の側から電子テクノロジー
を見る必要:
身障者にとってのVR:
●:重度の身障者に脳磁気センサーでコンピュータを操作させる
●:パーキンソン氏病とVR
■既存メディアの機能転換
●:Present Tense(Douglas Davis + Namjun Paik)パイクの教訓
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記号:■テーマ、◆サブテーマ、*コメント、●映像資料、◎活字資料
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第2回 | 4/21 |
講義概要で案内したテーマ:「インターネットにおけるマルチメディア表現
」へ
■マルチメディアとは何か?
*言葉としては1962年[multimedia corporation]:新聞・テレビ・ラジ
オなど複数のメディアを支配する企業との関連で使われた(『ランダムハウ
ス英和辞典』
*より本質的な考察の必要→4つの視点:
(1)技術 (2)社会・コミュニケーンの様式 (3)アート (4)理論・学問
(1) 電子メディアの技術として:
テキスト・静止画・動画・音・通信の統合
のメディアを持つ企業:まだメディアの特性を指す言葉ではなかった
*技術志向は依然強い:
◎日経産業新聞 (95-11-17)の記事に見るマルチメディア観
*今日のゲームは技術的には「マルチメディア」
●Over Blood (PlayStation)
*更なる傾向→ネットワーク化
◎「NTT-研究開発項目」(『Communication』)
●VRML(Virtual Reality Modeling Language) 紹介
*Netscape 3.0以降では、VRMLのplug-inがバンドルされている。
http://www.sgi.comからvrml galleryへ
(2)コミュニケーションの様式として
*1920年代のグラビア雑誌→移民の増加→「多元文化社会」「多元主義
」
マイノリティ(エスニック、女性、ゲイ、ハンディキャップ等々)/ローカ
ル/の復権
資本の多角化
(3) アート/パフォーマンス
*mixed mdeia→アート
*インターメディア←フルクサス(60年代に始まった新しい芸術ネットワ
ーク)
◆FLUXUS (latin)(流れ)/流れを変える/流れをつける(ハイアートとロ
ーアート、メディア間、芸術と人生、アーティストとノナーティスト→「す
べてがアートだ」)
◆ダダイズムやシュールレアリスムの影響
Armstrong/Rothfuss:In the Spirit of FLUXUS (Walker Art Center, USA,
1993)
ディック・ヒギンズ『インターメディアの詩学』(国書刊行会、1988)
(4)理論:現象学/コミュニケーション論
近代科学の専門的セクトの壁を取り払った現象学←エドモンド・フッサール
、メルロ=ポンティ:
◎モーリス・メルロ=ポンティ『眼と精神』(みすず書房)
多様な「学際」として始まったコミュニケーション学:
◎マーシャル・マクルーハン『メディア論』(みすず書房)
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第3回 | 4/28 |
■マルチメディアは、技術的にはコンピュータと切り離せない関係にあるが
、PC(パーソナル・コンピュータ)で初めてマルチメディア的な環境を具体
化したのは、Apple Computer, Inc.である。しかし、Appleの当初の構想
が最初に本格的に実現されるのは、NeXT(ネクスト)においてであった。
◆アップルに関する最近の話題(日経産業新聞[2/6/97]、ワイアード[97-6]
他)
経営不振/1996年12月NeXT社を合併→Apple & NeXTの創立者Steve
Jobs
●Apple Computerの出発(『コンピュータの歴史』)
◎『スティーブ・ジョブズ』(上・下)(JIC出版局、1989)
◎吉田広行・高原利之編『NeXTのすべて』(光栄、1992)
*1979年ジョブズ、XeroxのPARC(パロアルト研究所)のGUI(Graphical
User Interface--73年に開発)を見る。
*1983年初のGUIマシーン「LISA」発表($9,995) → 売れない
*1984年Macintosh ($2,495)
●MacintoshのTVCM (1984)(『ブレードランナー』のリドリー・スコ
ット)
●フリッツ・ラング『メトロポリス』(1927/84--G・モロダー音楽
)
◎Bug News[85-9](「マッキントシュの設計思想」)
1985年ジョブズ退社→ネクスト社設立→1988年NeXT1号機
◆MacよりもNeXTについて知る必要(Macに期待されていたことが実現されて
いる)
NeXTの特徴:あらゆる点で今日的傾向の先取り
◎NeXTの歴史(表)
*WYSIWYG(What you see is what you get)の実現 (Display Postscriptの
使用)
*マルチタスク/マルチプロセス(分散処理←集中処理):機能を分散しネ
ットワークする:中央に統合しない
*オブジェクト指向(object-oriented):命令機能のオブジェクト化(モジ
ュール/ユニット化)
*自己増殖の機能→InterfaceBuilder(プログラミングのGUI化)
●NeXTの機能・操作をヴィデオで紹介(次回に続く)
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第4回 | 5/12 |
■マルチメディア・コンピュータのはしりとしてのNeXT(OSはNEXTSTEP)
◆今日のコンピュータのすべてを先取りしていた。
◆NeXTが他に先駆けて実現したこと:
(1)UNIXの採用:Mach(マーク)>カーネギーメロン大学→マルチタスク
(2)GUI:AdobeSystems社のDPS(Display Postscript)を最初に使用して
WYSIWYG(What you see is what you get)を実現
(3)オブジェクト指向(object-oriented):命令機能のオブジェクト化(
モジュール/ユニット化)
(4)プログラムを自己増殖できる機能→InterfaceBuilder(プログラミン
グのGUI化)
(5)インターパーソナル・コピューティング
(内部<2、4>/外部<ネットワーク>のコミュニケーション)
→最初のウエブ・ブラウザはNeXT上で開発された
(→Mosaicの前身>スイスCERNのベルネ=リー)
(5)の補足
この部分は、「インター
パーソナル・コピューティング」ということを説明しています。コンピュ
ータの「内部」においても、「外部」においても、「インターパーソナル」
な関係を重視するということです。つまり、コンピュータ自身が自己参照的
で、マルチタスクであり、そのなかに何台もパソコンが入っているかのよう
な状態の実現[(2)と(4)はこのことに触れている]、それから、ネッ
トワークを介した「外部」との関係においても、万能のメインコンピュータ
に依存する「端末」ではなく、それぞれ自立して他のコンピュータと対等の
関係をもつこと。
●NeXTの紹介ヴィデオ(90年代初期のNEXTSTEPを再現)
◎参考:吉田広行・高原利之編『NeXTのすべて』(光栄、1992)
■UNIX小史:
現在支配的なパソコンの傾向は、1981年にIBMがCPUにIntel 8088、OS
にMS-DOS(マイクロソフト社)を乗せた最初のパソコンを発表してからであ
る。インテルのプロセッサー+マイクロソフト社のOSという組み合わせは
いまも変わらない。(このとき、IBMが独自のCPUとOSを使っていたら、事
情は変わっていたはず)
ところで、ビル・ゲイツが開発した(というより寄せ集めた)MS-DOSは、
UNIXがなければ生まれることができなかった。
話は、1960年代にさかのぼる。
当時、ようやく「ミニコン」と呼ばれるサイズになったコンピュータは、そ
れぞれにOSをプログラムしなければならなかった。
1969年、ベル研究所のケン・トンプソンが、DEC社製のミニコンPDP-7の
ためのOSとしてUNIXを開発。
UNIX(UNiplexed Information and Computing System)
>MULTIX(MITとGEが進めたOS計画
=MULTIplexed Information and Compuing System)への
批判
1971年、デニス・リッチーが加わり、DEC社製の新しいミニコンPDP-11
(「ミニコン」の標準機になる16ビットコンピュータ)に移植
●PDP-11の写真>『UNIX最前線』p.8
●トンプソンとリッチーの顔写真>『UNIX最前線』p.6-7
(1983年、トンプソンとリッチーは、チューリング賞
〈コンピュータ界のノーベル賞〉を受ける)
1973年、90%をアセンブラ語からC言語に書き換える
→(10%はハ ードの機種に依存)
→その部分だけ書き換えれば、ハードから独立
→大学へ配布開始(重要!!)
なぜ重要か?
1973年に関しては、特定のコンピュータでしか動かないプログラムが
、この年、10%を除いて汎用性を獲得したということです。ここから、
UNIXが、広まる基礎ができたという意味で、UNIXの歴史のなかでは非常に
「重要」だということです。
1975年、UNIXの版権がベル研究所からAT&Tの子会社のWE(ウエスタン・
エレクトリック)社に移る
――ただし、ここも、コンピュータのハードメーカーでは
なかったので、これを独占しなかった
1977年、1.0BSD (Berkeley Software Distribution) for PDP-11
1978年、DEC社、VAX(32ビットミニコン)発表
ベル研、VAX用のUNIX-OS、V32発表
1970年、ケン・トンプソンが、カリフォルニア大学バークレー校で講義
→ビル・ジョイを始めとする大学院生による研究グループ誕生
→3.0BSD(仮想記憶を追加、ディスクの一部を主記憶メモリに
見せかける機能)
1980年、4.0BSD発表、バークレー版が初めてVAXに乗る(V32のバークレー版)
→ARPA(Advanced Research Project Agency 米軍高度計画研究局)の
資金援助←核戦略
1982年、SUNマイクロシステムズ社(←ビル・ジョイ)
UNIXの専用機出荷→「ワークステーション」
――これまでは「ミニコン」(DECのVAX, 32bit)
1983年、BSD4.2、ネットワーク機能追加――LAN
マルチメディア・コンピュータのすぐれた初期モデルとしてのNeXTの紹介
*NeXTにかぎらず、これから紹介する予定の(現在最もすぐれたマルチメデ
ィア・コンピュータである)SGIのコンピュータを理解するためにも、UNIX
の理解が必要
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第5回 | 5/19 |
No Lecture.
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第6回 | 5/26 |
1983年、リチャード・ストールマン、FSF(Free Software Foundation)
設立
*多機能エディターEmacsの開発者、ハッカー
*GNU(グニュ) (Gnu is Not Unix)>ソフトは無料であるべき
*NEXTSTEPは、C処理系をGNUに負っている
1984年、MIT(with DEC, IBM)が最初のGUI、「X-Windows System」の開
発を開始(アテナ計画)
1985年、カーネギーメロン大でMach(マーク)計画始まる
MIT、X9(「X-Windows System」の第9ヴァージョン)を配布
1987年、Mach2.0 (マルチタスクの強化)→NeXT
*マルチタスク/マルチプロセス:
CPUのプロセスを並行処理する→MacのSystem7も「マルチタスク」だが、そ
れは、「マルチプロセス」(プロセス間通信機能)ではなく、「マルチファイ
ンダー」であり、他のプロセスは止まっている。
1988年、NeXTの1号機
1989年、NEXTSTEP(NeXTstep)1.0
1990年、NeXTdimension(本格的なマルチメディア・マシーン)発表
1993年、ハードウェア工場閉鎖「ブラック・チューズデイ」→インテル
版NEXTSTEP
1996年、NeXT社、アップルが買収
●InterfaceBuilderの機能紹介
●NeXT vs SUN(プログラミングの競争)
◆UNIXの精神
UNIXはのオープン性:ソースコードの配布→勝手にいじれる、シェアーウェア
なるべく既存のものを利用する
マルチタスク/マルチプロセス:各ツールは同時に動作している
ファイル性:ディスプレイもプリンターもメモリーもファイル(バイトの列)
◆オブジェクト指向:ファイルからオブジェクトへ
*ファイルはまだ部品→オブジェクト→汎用ファイル(?)
*データ+その操作手続き(メソッド)=オブジェクト(SoftwareIC)
*オブジェクトへのアクセス=オブジェクトへメッセージを送る
→メソッドの一つが呼び出される
部品が集まって全体を構成するのではない
それぞれが「コミュニケーション」機能をもったユニット=オブジェクト
機能(描画・コピー・消去・・・・・)やデータをオブジェクト単位で管理
ネットワークのミクロレベル(コンピュータの内部)とマクロレベル(通常
の意味での「ネットワーク」)
◎デビット・A・テイラー『オブジェクト指向
アプローチ――その全貌――』(星雲社2,300yen)
●以上をICのLM386を使ったパフォーマンスで示す
(真空管→ミニュアチュア管→トアンジスタ→IC, LSI:部品から集積回路へ
*モジュールとオブジェクト:モジュールはハードの集合;オブジェクトは
ソフトの集合
■メディア論の基本路線の確認:
◆メディア論は、ハード論ではない
◆「ハード」と「ソフト」との区別の無意味
◆メディアと別に社会や身体があるのではない
(→←料理は単なる食料や栄養源ではない)→文化との関係
◆トータルの立体的に考えること
◎スティーヴン・レヴィ『ハッカーズ』(工学社)→コミュニティ・メモリ
(電子掲示板、コンピュータ通信のはしり)
◆上記からの引用
*1973年、バークレーのレオポルド・レコード店にオンボロのメインフ
レーム・コンピュータを置いた(もともとミュージッシャンたちの掲示板が
あった)
◆スペースの共有
◎イリイチ『コンヴィヴィアリティのための道具』(日本エディタースクー
ル出版部)
*コンヴィヴィアル(自立共生的)道具←→産業主義的道具;手で動かす道
具(handtool)と動力に頼る道具(powertool)、操作的な道具
◎古瀬・廣瀬『インターネットが変える世界』(岩波新書)
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第7回 | 6/ 2 |
前回実施したアンケートへの一問一答。
■マルチメディアとジョン・ケージ
◆ジョン・ケージの重要性
◎『ジョン・ケージ 小鳥たちのために』(青山マミ訳、青土社)
●4'33" (AMADINDA, HCD 12991)
●ラジオ・ミュージック(1955年)のヴィデオ→ラジオ・アート
■メディア論を理解するためのパフォーマンス・ライクなショウ:
〈「送り手」/「受け手」〉から〈「場」/「出来事」〉へ
場の変容:
(1)オーラルな変容(鈴を鳴らす、オーストラリアのアボリジニの拍子木
をたたく、線香をたく)
(2)電気的な変容(マイクを通して音を増幅)
(3)電子的な変容(エフェクターを介在させる):最初は変容だが、次第
に構築へ(ヴァーチャルな音の構築→シミュレーション)→コンピュータは
、そのような変容と構築を可能にする
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第8回 | 6/ 9 |
Virtual Reality
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第9回 | 6/16 |
Virtual Realityと鏡、O2登場。
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第10回 | 6/23 |
CG,Image,Object(=VR)
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第11回 | 6/30 |
マルチメディアはインターネットやコンピュータなどのテクノロジーではなく、それを感じるセンスである。
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第12回 | 7/ 7 |
単位評価を自己採点方式で行った。ほぼアンケート形式で、内容は以下の通り。
1.あなたにとって「メディア」とは何か
2.この講義「メディア論」に何度ぐらいでましたか?
3.あなたが1.で定義した「メディア」を「論」じる時、あなたは、自分が100点満点で何点だと思いますか?その点数を書いて下さい。
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後期