山田ゼミ(東京経済大学コミュニケーション学部 2011年度「卒業制作・卒業論文」)
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佐藤 優衣

[卒業論文]音楽ツールの変遷:1990~2000年代

<目次>
<要旨>

 街中や大学構内をふと見渡すと、イヤフォンやヘッドフォンをしながら行き交う人々の姿が必ず視界に入る。このように、常に音楽を携帯し、聴くことが当たり前になっている現在において、音楽を聴くためのツールがめまぐるしく変化した1990~2000年代を多感な学生として過ごした世代が、どのようなツールで音楽を聴いてきたのか、また、どのような変遷を経たのか、当時の状況なども踏まえて論じていく。
 第一章インタビューの考察では、筆者とその友人である、Aさん、Bさん、Cさん、Dさんの5名へ実体験に基づいたインタビューと考察を行い、幼稚園~小学校、中学生、高校生と3つの時系列順に追ったものである。
 第二章音楽ツールの変遷では、インターネットの普及・回線の定額化、音楽配信サービスの登場によって、以前よりはるかに簡単に音楽を手に入れられる現在において、音楽配信サービスであるiTunes Storeと携帯電話向けの着うたに着目した。第一章でインタビューに協力してくれた友人4名も、どちらか一方、または両方を利用したことがあった。
 日本の場合は、PC向けのサービスよりも、むしろ携帯電話向けの着信音声(一般的には「着うた」、「着うたフル」と呼称されている)販売が、音楽をデジタルデータとして配信・販売するサービスとしては先行したビジネスになっている。
 第三章仮説・検証では、インタビューを進めていくうちに考えられた、1、音楽は1人でいる時、手持無沙汰な時などに「ながら聴き」することが多い。→音楽を個人で聴く傾向が強い?好みの細分化が進行している?(他人との共有が困難になった)日常的に音楽が流れている事が当たり前の環境で育ったから?2、自分だけで聴く音楽と、他人と共有する音楽が存在する。→私的な音楽と外向けの音楽があるのでは?3、社会人と学生では、音楽の聴き方がどのように変わるのか?(音楽を聴く環境、入手方法、購買理由など)、以上3つの仮説と考察を踏まえ、小泉恭子『音楽をまとう若者』を参考に検証していく。仮説3についても筆者のアルバイト先で、実際にインタビューを行った。
 近年における音楽ツールの発達や記憶媒体の大容量化などにより、既存のポータブルオーディオプレイヤーであるiPodやWALKMANは、数千もの曲を管理することが可能になった。 その膨大な曲数から聴きたい曲を選ぶには、アーティスト名、アルバム名、レーティングを利用するか、自分の気に入った曲のみを集めたプレイリストを作成するのである。しかし、気分や興味は何かある度、もしくは何もなくても変化するものであり、選んだ曲がイヤフォンを外すまで気分に合っているとは限らない上、作成当時が反映されるプレイリストにも同様のことが言える。筆者たち5名は音楽を聴く際、「特定のアーティスト、曲が聴きたい」という明確な目的がある場合と、「特に聴きたい曲はないがとりあえず何か聴いている」場合があった。前述したように、この2つはほんの些細なことで変化しうるのである。例えば、ある時点までは特定の曲を延々とリピートしていたが、それに飽きてしまい急に別の曲を聴きたくなったりする。または、ランダム再生中の曲がきっかけで特定のアーティストの曲が聴きたくなるなどその要因は多岐に渡った。このような理由により、たくさんの曲を持ち歩けるポータブルオーディオプレイヤーは、非常に変化しやすい「今聴きたい音楽の選曲」を手助けするものであり、普及を促したと考えられる。
 インタビューをしていく中で興味深かったのが、①好きなアーティストであっても、必ずCD購買行動に出ているわけではないということ、②普段の音楽嗜好を知る筆者に対してお対外的な応答をしたことの2つである。①はCDを購入するよりも、インターネットやポータブルオーディオプレイヤー、携帯電話の普及・発展によって以前より安く、簡単に音楽を手に入れることができるようになったのが原因として考えられ、②は私的な好みと公的な好みを使い分け、巧み自己防衛を展開する女子の対外的な面がうかがえた。そして、筆者を含む5人全員が自分専用の音楽ツールを所有しており、音楽を個人で聴く傾向が強いことがわかった。もちろん車内やカラオケ、日常会話などで他人と音楽を共有することはあるのだが、インタビューの内容からすると、一人で聴く時間が圧倒的に多いことがわかった。


遠藤 智章

[卒業論文]『ダークナイト』が映しているもの

<目次>


<要旨>

(作成中)

森岡 有紀

[卒業論文]ハローキティが愛される理由 ~ハローキティと私たちとの深い関係~

<目次>
<要旨>

 きっかけは私がサンリオキャラクターのグッズが好きだったこと、キャラクタービジネスで株式会社サンリオが成功を収めていたことである。
 サンリオの中でも一番人気のあるハローキティはなぜここまで日本人に愛されてきたのか。ハローキティが好きな人はハローキティのどういった部分に魅力を感じているのか、好きな人達にはどんな共通点があるのか研究していくことにした。本論文では13人の被験者達のインタビュー調査を参考に書き進めている。
 第二章では2つの仮説を検証している。
 ①ハローキティグッズを持つのは人にかわいいと言われたいからである。
 ②キャラクターグッズのハローキティが好きな人はピューロランドにいる着ぐるみのハローキティも好きだということにはならない。
 ①は自分自身が「かわいい」存在であるために「かわいい」を身につけアピールし、自己確認の道具になったり、他人との話の材料として身に付けたりと彼女たちの生活にとってたくさんの意味を持っているグッズだと言える。
 ②の答えは販売戦略にあり、テレビや出版物でそのことを露出しすぎると、飽きも早くなるので、口コミを中心に広げているところにある。
 個人で想像しやすい程度にちりばめることで、こちらも都合のいいものだけ拾えて、自分にとって一番良いハローキティのストーリーを作っていく。よって個人によってハローキティのイメージが違ってくる。
 自分が「かわいい」存在であるために、ハローキティの世界観が好きな人、様々なタイプのファンがいることがわかる。
 第三章では若者たちが互いに「キャラ」化してコミュニケーションをとっているという点とハローキティグッズを持つことで趣味を表面化し、若者同士のやり取りになにか関係してくるのかということを述べている。
 ここでは自分の立場を補強するために「ハローキティ好き」をアピールすること、あくまでもハローキティは他人と「かわいい」を共有するための道具、本当にハローキティが好きだが、他人とのやり取りの中でそれを隠してしまうことがあること、
 若い女性特有のコミュニケーション方法の中でハローキティを武器としていることがわかった。
 第四章では人間同士ではなく、人間とキャラクターについて書いていく。キャラクターが提供する精神的効能には次の8つが代表的なものである。
 ①やすらぎ ②庇護 ③現実逃避 ④幼年回帰 ⑤存在確認 ⑥変身願望 ⑦元気・活力 ⑧気分転換 (相原、2007、p27-28)
 この8つの中で今回の被験者はハローキティにどのような効能を求めているのか。
 今回は「やすらぎ」を求める者が多かった。それは第三章で書いてきた人間の「キャラ化」に関係がある。
 「キャラ化」は人間同士のコミュニケーションを円滑に、わかりやすく、親しみをもつために現代の若者が作り出したものだ。「キャラ化」に慣れている現代の若者はキャラクターに精神的絆を強く感じているのにもうなずける。
 グループ内の人間を「キャラ化」して誰かに依存しながら生きている。
 「キャラとしての私」のほうに親近感を覚えてしまっている被験者たちは、ハローキティのように喜怒哀楽の表情がないキャラクターに感情移入することなど簡単なことなのだ。「元気・活力」などの本来のキャラクターグッズに求められる効能よりも、「やすらぎ」を求めてしまうことがわかった。
 結果、ハローキティグッズを身につけることで、自分に自信をつけ、同じグループに所属していることを確認しあう。ハローキティグッズで自分をアピールし、他人とのやり取りを簡単にする。ハローキティグッズを持つ人には、自分がより生きやすくするための道具として身に付けている人がわかる。大人になってもキャラクターグッズを身につけるのは日本の特徴でもあるが、それは日本人のコミュニケーションの取り方に関係しているのではと思った。


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